完全新設計となる直噴5L V8エンジンを搭載
BMW、フォード、タタと親会社が変わっても、レンジローバーの本質は変わらない。世に数多く存在するオフロード4WDとは一線を画す価値観を持ち、悪路走破性に関して一家言持つブランド、そのあり方は簡単には変わらないし、ユーザーにとってもおいそれと変わってもらっては困る貴重なメーカーでもある。
とはいっても、エコや環境問題が叫ばれる自動車業界にあって、大きくて重いSUVが厳しい状況に置かれているのも事実。レンジローバーにとって生きにくい時代ではあるが、そういった状況をただ黙って見ているわけにはいかない。これまでも改善が重ねられてきたが、今回の変更は時代に求められてということだろう。
最大の注目点は完全新設計となる直噴5L V8エンジンの搭載。このエンジンはランドローバーとジャガーの共同開発によるもので、ジャガーが先に搭載した新世代AJ-V8と基本的に同じ。これまでNAが4.4L、スーパーチャージドは4.2Lだったが、今回は両仕様とも5Lとなるのも同じだ。ただし、オフロードなど悪路走行をふまえて、苛酷な状況下でもエンジンが機能するよう、潤滑系や防水性などを中心にレンジローバー独自のチューニングが加えられている。
このエンジン変更の目的は、動力性能を向上させながら燃焼効率を上げてCO2排出量を抑えること。150バールのスプレーガイデッド式ガソリン直噴システム、可変カムシャフトタイミング、可変バルブリフトなどにより、理想的な燃焼を追求している。緻密に燃料噴射量とそのタイミングを制御する直噴システムは、NAで11.5、スーパーチャージドで9.5という高い圧縮比も実現している。
この結果、NAで375ps/510Nm、スーパーチャージドで510ps/625Nmを実現しながら、10・15モード燃費は6.0km/L、5.5km/Lを達成(ともにスポーツの燃費データ)。燃費性能を7%ほど改善しながら、動力性能を大に向上させたことになる。ZF製6速ATにも改良が加えられ、ロックアップ領域は広がっているので、その効果もあるのだろう。ちなみに、スポーツとヴォーグそれぞれに2種のエンジンが設定される。