GT500マシンを大幅に凌ぐストレートの速さ
アストンマーティン ヴァルキリーは、1万1100rpmまで回る超高回転型のコスワース製6.5L自然吸気V12エンジンを搭載。ここにハイブリッドシステムを組み合わせることで、システム出力1176psを生み出す超弩級のロードカーだ。
さらに驚くべきはそのエアロダイナミクスで、ボディ下面の空気流を並のレーシングカー以上に積極的に活用する手法を採用。最高速度付近ではダウンフォースが1800kgに達するともいわれる。もちろんモノコックやボディパネルはカーボン製で、車重は1000kgをわずかに上回る程度。ただし価格も超弩級で4億円を超えるとみられる。
ただでさえモンスタークラスのヴァルキリーをサーキット専用モデルに改め、さらなるハイパフォーマンスを追求したのがヴァルキリーAMRプロである。
これは、ヴァルキリーのシャシやエアロダイナミクスをサーキット走行用に改良したもので、横Gは最大で3Gに達し、ルマン24時間が開催されるサルトサーキットでの想定タイムは3分20秒という。ちなみに今年のルマン24時間を制したトヨタGR010ハイブリッドが予選でマークしたタイムが3分27秒247だったので、ヴァルキリーAMRプロの速さは現役のルマンレーサーを凌ぐレベルにあるといえる.
めちゃくちゃ運転しやすい!とはこれいかに
そんなヴァルキリーAMRプロが、日本初上陸を果たし、富士スピードウェイでシェイクダウンを行った。ドライバーは、スーパーGTにも参戦する加藤寛規選手、桂伸一氏、そしてジェントルマンドライバーであるオーナー自身の3名だった。
筆者も加藤選手のドライブで同乗走行をさせてもらったが、その速さは圧倒的で、ストレートの中ほどで300km/hに到達。これは富士の最高速度がギリギリで300km/hを記録するスーパーGTのGT500マシンを大幅に凌ぐ速さである。
もちろんコーナリングパフォーマンスは圧巻で、コクピットに押しつけられる横Gにより身体中が痛くなるほどだったが、それ以上に驚かされたのが走行時の安定感と乗り心地のよさ。これは強大なダウンフォースによって車体が路面に押しつけられているため、車体に無駄な動きが生じないことで得られるものと推察される。
なお、これほどのパフォーマンスにもかかわらず、オーナー氏は「めちゃくちゃ運転しやすい!」とその感想を語っていた。やはり、どこまでも驚きに満ちたクルマであることは間違いないようだ。(文:大谷達也/写真:井上雅行)