ベントレー ベンテイガの量産車最速タイムをスルー
パイクスピークといえばコロラド州ロッキー山脈に繋がる山のひとつで標高は4301m、毎年アメリカ独立記念日前後に開催されるヒルクライムレースが有名だ。ちょうど100回目を迎えた2022年は6月26日に行われ、ロビン・シュートがアンリミテッドクラスでドライブした2018ウルフTSC-FSが総合優勝した。
このタイムトライアルの興奮が落ち着きはじめた7月初旬、ランボルギーニからこのパイクスピークへの招待状が届いた。「なんで今頃?」と思ったが、よく読めば「ウルスプロジェクト」なる文字も見える。指定されたコロラドスプリングスのホテルへ到着してプログラムを見ると「朝の4時半に用意されたウラカンSTOでパイクスピークへ出発」とあった。
いくらコロラド州の最高法定速度が約120km/hと全米でも速い方とはいえ、STOの最高速度は310km/h。しかもブルーとオレンジのカラーリングでとても目立つ。案の定ハイウエイでパトカーに止められ、身分証明書の提出を求められた。何とか無事にパイクスピークヒルクライムのスタート地点近くの駐車場に到着すると、そこにはカムフラージュされたウルスが特設ピットの中でメンテナンスを受けていた。
ここでようやく明らかにされた事実は、このウルスは8月19日に開催されるペブルビーチで初披露されたパフォーマンス版「ペルフォルマンテ」の量産試作車だった。そしてデビューを飾るためにパイクスピークで量産SUVの最速記録を樹立すべく、準備が行われていたのである。つまりレース開催時には、量産SUVクラスのホモロゲーションがまだ取得されていなかったため、スペックが決定したこの時に、改めて記録に挑戦しようというのである。
パイクスピークは有料道路で、さらに通行時間制限があり、一般通行は朝9時から始まるためランボルギーニチームは、それよりも前の時間にルートを借り切って記録挑戦を行っていたのだ。
そして公式計時チームの下、イタリア人ドライバーのシモーネ・ファッジョーリによって標高2862mから頂上の4301mまで標高差1439mある約20のワインディングコースを10分32秒064で走破、これまでベントレー ベンテイガの持っていた、量産SUVとしての記録10分32秒902を破ったのである。