緻密なトラクション制御で、ハイレベルな挙動を実現
そして、乗り心地がまたいい。
試乗コースは埼玉県の山岳地帯に近い景勝地周辺で、時間の都合で一般道とちょっとしたワインディングロードでハンドルを握った。だから道路状況もとくに良好というほどでもなく、適度に荒れた路面を含んだルートだったが、山頂のキャンプ場へと向かうワインディングロードでは目の覚めるような身のこなしを見せてくれた。
電気モーター駆動なので、右足を踏み込めば瞬時にトルクが生み出されてくる。その力強さをまったく無駄にすることがないような感じのスムーズなボディの動きとともに、クルマはハンドルを回す方向へ、右へ左へと正確に素早く向きを変えて行く。この挙動レベルの高さには心底、驚かされた。
このクルマの動き方のフィーリングは、まるでアクティブサスペンションが装着されているかのように思えるもの。各輪のトラクションを緻密に制御することができると、アクティブではない従来型サスペンションでもここまでダイナミクスが変わるのかと正直、びっくりさせられた。
ただし、クルマ側のパフォーマンスが高いからといって調子に乗ってはいけない。前席に座るドライバーや助手席の乗員はまだ良いとしても、後席に人を乗せていたりするような場合は、相当に丁寧なドライビング操作を行うことが必要だとも思った。
ボディがあまりロールしないのに左右への横Gが強くかかってしまうような走り方をしてしまうと、同乗者の乗り物酔いを誘発する可能性が高いからだ。
GT-Rのトラクション効率を超えた「eフォース」のダイナミズム
試乗後、開発エンジニアに聞くと「エクストレイルの前には、GT-Rの駆動系を手掛けていました」という。そして、エンジンによる4WDのトラクション効率を徹底的に追求したその経験を持ってして「eフォースによるトラクション効率のほうがはるかに高いです」と教えてくれた。
「電気モーターは、今どれだけの出力を発生しているのかがほぼ正確に推定できます。エンジンでは気温や湿度、高度などの条件に応じて出力が変わるので、推定値にある程度の幅があります。正確な出力が推定できれば、その時点での各タイヤの理想的なトラクション量と実際の値との差がすぐに出ます。そして瞬時に修正できます。この作業を緻密に繰り返すことで、走行時の理想的な4WD駆動効率の実現を目指しています」
なるほどである。実際、テストコースのワインディングロードにおける走行テストでは、GT-Rに肉薄するような性能を見せてくれたという。当然、ダートや氷雪路といった悪条件下での走行性能の高さも推して知るべしである。
ボディやサスペンション取り付け部もよりしっかりとしたものになっており、タイヤもeフォースがパフォーマンスを発揮できるような仕様とされる。まるでミズスマシのように、ボディの状態を一定に保ったままで次々と現れるコーナーを静かに走り抜けていく新型エクストレイル。eパワーの、新たなる境地が出現したことを実感できた。(写真:永元秀和)
■日産 エクストレイル G e-4ORCE(2列) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4660×1840×1720mm
●ホイールベース:2705mm
●車両重量:1880kg
●パワートレーン:直3 DOHCターボ+モーター×2
●総排気量:1497cc
●エンジン最高出力:106kW(144ps)/4400-5000rpm
●エンジン最大トルク:250Nm(25.5kgm)/2400−4000rpm
●モーター(前)最高出力:150kW/4501-7422rpm
●モーター(前)最大トルク:330Nm/0−3505rpm
●モーター(後)最高出力:100kW/4897-9504rpm
●モーター(後)最大トルク:195Nm/0−4897rpm
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・55L
●WLTCモード燃費:18.4km/L
●タイヤサイズ:255/55R19
●車両価格(税込):449万9000円