2009年10月、プジョー207シリーズのフェイスリフトが発表された。日本市場登場から2年半、円熟の時を迎えるとともに、価格が見直されて大きな注目を集めた。ここでは207シリーズのベースモデルとして登場した「スタイル1.4」の試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年1月号より)

200万円を切るモデルが登場、シリーズ全体に価格見直し

プジョー207の日本市場におけ販売台数は2009年1月から9月で1843台と発表されている(JAIA調べ)。年間ペースに換算すると2500台ほどとなる。2007年3月に導入されて以来、2007年は2799台、2008年は3703台と人気を高めつつあったから、昨年秋以降の自動車不況が逆風になったことは否めない。

そんなプジョー207だが、10月1日にフェイスリフトが日本発表されて、ちょっとした話題になっている。

6月に欧州で登場したものだが、その内容はフロント/リアデザインの変更、ボディカラーの新色追加、トリムカラーやシート形状の変更に加え、ウインドウガラスのオートクローズ機能やワンタッチウインカー機能といった新装備の追加といったもの。これらによって、207はリフレッシュされ充実したものになったのだ。

そして、もうひとつの注目点が車両価格の変更。207は2006年春に欧州でデビューしているが、当時、その下に同じシャシを使う1007があり、さらにその下に107もあり、加えて206も継続して生産が続けられていたこともあって、207は高級路線にシフトすることになり、価格が上昇してしまった嫌いがあった。BMWとの共同開発による凝った直列4気筒エンジンや安全性を中心とした装備の充実が際立ちコンパクトカーとしてはコストがかかっていたし、日本市場にはATの設定の問題もあり上級グレードが導入されるという事情もあった。

こうした中、今回の変更でシリーズ全体を通して価格が引き下げられ、車両価格200万円を切るグレードがふたつ設定された。スタイル1.4は1.4Lのエンジンに5速ロボタイズドAMTを組み合わせたモデルで189万円、スタイル1.6は1.6Lのエンジンと4速ATを組み合わせ199万円だ。207の内容でよくぞこの価格が実現できたと感心する。

この価格はいかにして実現したのだろうか。世界デビューから3年半が経過し量産効果が出てきたこと、日本市場でさらなる販売拡充を図るという狙い、さらにはポロをはじめとしたライバルへの対抗策という側面もあるだろう。そう考えると、内容と質を落とすことなく実現しているわけだから、企業努力と戦略ということになる。

画像: 2009年10月、日本市場でフェイスリフトが発表されたプジョー207シリーズ。リアコンビランプに15個のLEDが採用された。

2009年10月、日本市場でフェイスリフトが発表されたプジョー207シリーズ。リアコンビランプに15個のLEDが採用された。

ベースモデルにこそ207の真髄がうかがえる

今回試乗したのはスタイル1.4。日本市場では1.6が中心となるが、欧州ではこのセグメントではむしろ1.4がメイン。このモデルにこそ207の真価がうかがえるとも言える。

乗り込んでみると、さすがに装備は豪華ではないが、必要とされる機能は備わり、これで十分というか、かえってシンプルで気持ちがいいとも感じる。走りも納得のいくもので、エンジンとシャシのバランスもいい。ちなみに、1.6Lと同様、この1.4LエンジンもBMWと共同開発によるもの。ATの設定がないため日本導入が遅れ、ようやく2008年8月に5速AMTで登場、それ以来、市場から高く評価されているものだ。

このエンジンの最高出力は88ps。低速からトルクにも余裕があり、新型ポロがパワーアップしてきたのもこのエンジンを意識したものと想像することができる。5速AMTを駆使してエンジンを回してやれば小気味よい走りが可能だ。多少のコツを必要とするが、それも楽しい。燃費性能も10・15モードで14.1km/Lと良好で、今回の取材では12.5km/Lをマークした。

少し「通好み」という面も見せるスタイル1.4に対し、新登場となったスタイル1.6は誰にでも薦められるモデルだ。1.6Lエンジンと4速ATの組み合わせで、さらにクルーズコントロールも装着して199万円という車両価格は魅力的だろう。 

それにしても、プジョー207のポテンシャルは相当に高そうだ。上級モデルのプレミアムやシエロも200万円台前半の価格となり競争力を大幅に高めているし、来年早々にはSW、CC、そして3ドアモデルのフェイスリフトも発表する模様。ひょっとしたら、3ドアには1.6Lターボ+5速MTのGTモデルの他、ベーシックなスタイルの投入もあるかもしれない。

これまでは上級志向とも言えた207だが、コンパクトカーの原点という本来の姿を取り戻した今、一気にその人気は高まりそうだ。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘/写真:小平 寛)

画像: インパネに大きな変更はないが、エアコン吹き出し口やダイヤル、ボタン部分にクロームのアクセントがつけられて質感が向上した。

インパネに大きな変更はないが、エアコン吹き出し口やダイヤル、ボタン部分にクロームのアクセントがつけられて質感が向上した。

プジョー207 スタイル1.4 主要諸元

●全長×全幅×全高:4045×1750×1480mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1170kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1360cc
●最高出力:65kW(88ps)/5250rpm
●最大トルク:133Nm/3250rpm
●トランスミッション:5速AMT
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:14.1km/L
●タイヤサイズ:185/65R15
●車両価格:189万円(2009年当時)

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