パトカーや消防車などの緊急自動車は、法令で定められた特別な自動車なので赤信号の交差点をそのまま進める、というのは知っている人が多いと思う。一方で、最高速度の規定や一時停止の有無についてはご存知だろうか。また、緊急自動車が来た時にどう道を譲ったら良いか覚えているだろうか。今回はそんなはたらくクルマ「緊急自動車」について深掘りしてご紹介しよう。

逃走車両が時速80kmオーバーだと追跡できないってこと...?

また、パトカーに関しては、さらに追加の特例が存在する。道交法第41条第2項によると、サイレンを鳴らして赤色警光灯をつけ緊急自動車の要件を満たした状態では、スピード違反を取り締まるためなら制限速度を守らなくていいという規定が存在する。その上、速度違反を取り締まるときで、とくにサイレンを鳴らさない方がよいと判断できる場合には、サイレンを鳴らすことも不要となる。

これは極論を言えば、「追跡中のパトカーであれば、赤色警光灯をつけてさえいれば時速80km以上で追跡してもOK」ということになる。では、赤いパトランプを点けずに追跡した場合はどうだろう。

1988年3月17日の最高裁判所の判例に、パトカーが赤パトランプを点けずに追跡する、つまり法令に違反し緊急自動車の要件を満たさない状態で取締まりをした場合でも、速度違反をした人の「違反した事実」が消える訳ではなく、「速度違反の証拠能力」を否定するほど違法ではないのでOKであるとされている。

パトランプなしでの追跡でも、速度取り締まりは可能。

そんなのアリかよと思ったそこのアナタ。そもそも我が国では、自動車を公道で運転することが法律で禁止されており、運転技能・交通規則に関する知識を証明して初めて「運転する許可」、つまり「自動車運転免許」が発行される制度であるということをお忘れなく。

免許取り立ての頃の初心に帰って「公道=みんなで共有している道」であることを思い出していただき、交通規則に従った安全運転をしていれば「警察への課金」と無縁になれるだろう。

緊急自動車に進路を譲るのは、マナーではなく罰則ありの義務

道路交通法第40条によると、後方から緊急自動車が近づいてきた場合は、基本的に左側に寄せて進路を譲ることになっている。ちなみに交差点付近でなければ、徐行や停車の必要はない。

場所進路の譲り方
交差点付近交差点内を避け、道路の左側に寄せて一時停止
※一方通行の道路で、道路の左に寄るとかえって邪魔になる場合は右に寄せて一時停止
交差点以外の場所道路の左に寄せて進路を譲る

また、緊急自動車に進路を譲らないのは交通違反となるので注意が必要だ。道路交通法には、「緊急車等妨害違反」と「本線車道緊急車妨害違反」という2つの規定がある。

違反名違反内容反則金違反点数
緊急車等妨害違反緊急自動車の進行を邪魔する6000円1点
本線車道緊急車妨害違反緊急自動車の本線車道への合流を邪魔する6000円1点

今後、緊急自動車に遭遇した際には、速やかに進路を譲ることで、緊急自動車が円滑に進行できるように心がけてほしい。

番外編:警光灯(車載ランプ)の種類

緊急自動車は赤いランプを点けているが、街中でよく見る青いランプのパトカーみたいな車や、高速道路でよく見かける黄色いランプの車は何を意味しているのだろう。

ランプの色用途説明
赤色緊急自動車パトカー、救急車、消防車など。ガス会社や電力会社でもガス漏れや漏電などの応急作業用に赤色回転灯を付けた緊急車両がある。
また、輸血運搬車両などにも装備される。
黄色道路維持作業車NEXCO、JAFなど道路の維持・修繕・道路標示の設置などを行う専用車両用。
高速道路の道路管理パトロールカーや除雪車、清掃車なども該当。
緑色運搬車両幅3メートルを超えるトレーラーをけん引するトラクターやその誘導を行う車両に設置。
緑色回転灯を使用するには、緩和申請の認定が必要。
青色自主防犯活動車両いわゆる防犯パトロールカー用。自主防犯活動を行うことを目的として、
一定の条件を満たす団体(警察と運輸支局などの許可が必要)が防犯パトロールに使用するが、緊急走行はできない。
紫色停車中の故障車両故障して停車中であることを後続車に知らせる装備。停止表示板のように道路上(故障したクルマの後方)に設置する。
特別な申請などは不要だが、点灯できるのは停車時に限定される。

このように、各色にそれぞれの意味がある。こうした「はたらくクルマ」に遭遇した際にはぜひ、こちらの記事の内容を思い出していただければ幸いである。

画像: NEXCOの道路維持作業車。黄色いランプを搭載している。

NEXCOの道路維持作業車。黄色いランプを搭載している。

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