かたや輸入車SUVとしては珍しい最大7人乗り、かたやブランドラインナップのボトムレンジに位置するコンパクトさがウリ。だがひとたび鞭を入れたなら、前後2モーターで4輪駆動化されたこの2台はどちらも、驚愕のパフォーマンスを見せつけてくれる。「日常」というオブラートに包まれた「非日常」の刺激は、一度味わうと病みつきになること間違いなし。

実用性に富み、扱いやすさも備えた「ちょうどいい」2台

メルセデスEQ EQB(350 4マティック)とボルボ XC40 リチャージ(アルティメット ツインモーター)・・・交通環境が窮屈気味な日本で乗りこなすには、サイズ的にもちょうど良さげなインポートBEVの代表選手だと思う。

画像: EQBはサイズ的なメリットだけでなく、見切りが良いのも特徴。入りくんだ住宅街の狭い道でも、気を使うことなく入っていくことができる。後方視界も広いので、こんな道でもバックは楽々。

EQBはサイズ的なメリットだけでなく、見切りが良いのも特徴。入りくんだ住宅街の狭い道でも、気を使うことなく入っていくことができる。後方視界も広いので、こんな道でもバックは楽々。

プジョーe-2008やDS3 Eテンスなど、似通ったクラスでやや先行していたフランス勢(ステランティスグループ)の電動系モデルたちとはまた違う個性も興味深い。

やや背高のっぽなフォルムが個性的なメルセデスEQ EQBは、全長4685×全幅1835×全高1705mm。3列シートを備える実用系SUVとして、ほどよいサイズ感だろう。

乗り込んでみるとドライバーの着座位置が高く、ルーミーなグラスエリアのおかげもあって視界が広い。いかにも取り回しがラクそうだ。ホイールベースは2830mmもあるので5名乗車なら荷室はゆとりたっぷり、いざとなれば大人2名が座れる3列目シートをセットすることもできる。

ボルボXC40リチャージはそれよりもさらに250mm近く全長が短い。ボルボラインナップの中ではもっともコンパクトだがホイールベースは2700mm確保されている。デザイン的にも、カジュアルながら塊感が強く、適度な重厚感を感じさせる。

インテリアは派手さこそないものの、シンプル&クリーンなコーディネイトはいかにも北欧系。「コンパクトシティSUV」という謳い文句にふさわしい、モダンで洗練された雰囲気が漂う。

画像: 取材日、早朝集合で充電中のXC40リチャージ。駐車スペースの「あまり具合」が、コンパクトさを物語る。

取材日、早朝集合で充電中のXC40リチャージ。駐車スペースの「あまり具合」が、コンパクトさを物語る。

どちらのモデルも、こうしたスタイルやパッケージングなどのアドバンテージはもともとベースとなるGLBやXC40の内燃機関搭載モデルから受け継いだ素質だ。それじゃあ電気自動車としての個性はどこで表現されているのか?と問われれば、グリルレスのマスクがその最たるもの、と言えるだろうか。

あえてICEとBEVで分け隔てしないことで個性を主張するプジョー、DS系のラインナップに比べれば、一見してわかる差別化が施されてはいる。とくにEQBはグリルをカバーするだけでなくヘッドランプまわりからバンパーに至るまで「メルセデスEQの顔」となっている。

逆にXC40リチャージは基本的にグリルをカバーしているだけのように見えるが、実はBEV全車でブラックルーフ化されている。ちなみにフロントセクションやフロア構造は、しっかりBEV専用になっているそうだ。

好みはあるだろうけれど、どちらもほどよくICEとは差別化されている、と言っていい。ことさら「高性能」をアピールするカテゴリーではないので、派手なエアロは必要なし。どちらかと言えばフルバッテリーEVならではのスムーズさとか、静かさといった「優れた走りの質感」に期待するところだが・・・実際に走らせてみるとこの2台、なかなかの曲者だった。

もちろん、いい意味で、である。

ETCゲートからの脱出加速はさながら「異次元」【メルセデスEQ EQB】

EQBとXC40 リチャージの「奥ゆかしいイメージ」をわかりやすく払拭してくれたのは、有料道路につながるETCゲートからの猛ダッシュぶりだった。

画像: EQBのクルージングはきわめて快適。高速域でも静粛性が高く、リラックスして走らせることができる。

EQBのクルージングはきわめて快適。高速域でも静粛性が高く、リラックスして走らせることができる。

まずはEQB 350 4マティック。バーが開いた瞬間に、単純にいつもの感覚でググっとアクセルを踏み込んでみたのだが、そこからのダッシュ力は完全に想定外だった。勢いあまって、法定速度までは文字どおり「アッ!」という間。ルームミラーに映っている入口ゲートが瞬時に、はるか彼方に去っていく。

一般道で流れに乗りながらのペースを保っている限り、EQBはとてもスムーズで従順な、いかにも電気自動車らしい走りを満喫させてくれていた。回生モードをデフォルトの「D」にしていても適度な回生フィールは扱いやすく、ギクシャクすることもない。明確なクリープをあえて残しているところも、慣れ親しんだICE感覚でわかりやすかった。

加えて、変にボディまわりの剛性感ばかりがたつことなく、しっかり感としなやかさがほどよくバランスしている乗り味は、いかにもメルセデス・ベンツらしい。どれほどハイパフォーマンスなモデルでも、むやみにドライバーに「速く走れよ!」と煽ることのない奥ゆかしさは、メルセデス・ベンツというブランドが持つ懐の深さ、魅力そのものだと思う。

同時に、イルミネーションやメッキ類を巧みに使ったEQB 350のインテリアは華があって、所有する悦びをわかりやすく味わわせてくれる。3列目のシートはほとんど使う機会がないけれど、ミニバン感覚のユーティリティ性能はやはり便利だろう。当然ながら荷室もゆとりたっぷりで、実用車としての才能も非常に優れている。

画像: EQBの基本フォルムはトール&スクエア。外観からも、ルーミーなスペースが想像できるだろう。

EQBの基本フォルムはトール&スクエア。外観からも、ルーミーなスペースが想像できるだろう。

しかしそんな「平穏」が、アクセルペダルを一定以上に踏み込んだ瞬間から弾けてしまうあたりもまた、メルセデス・ベンツの流儀に則っているといえば、確かにそのとおり。

けっして、イケイケな「弾けかた」ではない。加速時の姿勢はあくまでフラットで、慣れくれば思わずにんまりとほくそえんでしまうような類の、きわめてジェントルな弾けかたをしてくれる。

考えてみれば、EQB 350 4マティックのシステム最高出力は、292ps/520Nmに達する。メルセデス・ベンツにとって高性能仕様のアイコンであるAMGが誇る史上最強仕様の直4ターボを積んだ「A45 4マティック」の最大トルク(500Nm)を、軽く上回っているのだ。つまるところ、EQB 350 4マティックが遅いわけがない、のである。

しかも前後に配置された新設計の永久磁石同期モーターは、パワーバランスを走行状況に応じて緻密かつ綿密に制御してくれる。その頻度は実に、毎秒100回。人が感じ取ることのできる領域を超えた「見えない気配り」が、発揮されるパワートルクを一片たりとも無駄にすることなく、日常領域での素直さへと結びつけてくれているわけだ。

その心地よさに慣れてしまったからこそ、思わぬ場面での想定超えの本領発揮ぶりに、思い切りのけぞってしまう。そういえばEQBにはこの350 4マティックとは別にもうひとつ、140kW/385Nmを発生する電気モーターで前輪を駆動する「EQB 250」が設定されているけれど、日常遣いではそちらで十分、きっと楽しめる。

画像: クローム系の加飾、随所に配されたイルミネーションなど、EQBのインテリアは昼も夜もなかなかにぎやか。

クローム系の加飾、随所に配されたイルミネーションなど、EQBのインテリアは昼も夜もなかなかにぎやか。

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