内燃機関に48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせることで、全車電動化をいち早く達成したボルボ。BEVやPHEVと多彩なパワートレーンを用意するボルボの中でMHEVはベーシックな電動化ユニットとなるが、2030年にBEVだけのブランドとなるボルボでは「いま乗っておきたい」パワートレーンである。(Motor Magazine2022年12月号より)

応答性や過渡領域の力強さは、はっきり実感できる

従来モデルと出力(197ps/300Nm)は不変だが、ミラーサイクル化やエンジン構成部品の変更(ピストン、インテーク側VVT、インテークマニホールド)、VNT(バリアブルノイズタービン)ターボチャージャー、電動オイルポンプの採用など効率化が行われている。さらにトランスミッションは従来の8速ATから湿式クラッチ採用の7速DCTへ変更と大きく手が入っている。

画像: 両車ともトランスミッションがDCT化され、より小気味のよい走りを味わえるようになった。

両車ともトランスミッションがDCT化され、より小気味のよい走りを味わえるようになった。

その走りはどうか? エンジン/ISGMはスペック的には従来モデルと同じだが、実用域での滑らかなフィーリングやエンジン停止から再始動のスムーズさはそのままに、アクセルペダルを踏んだ時の応答性や過渡領域の力強さは体感レベルでアップしている。

おそらく、トランスミッションがDCTになったことで駆動がダイレクトに伝わるようになった点
が大きいが、それだけでない。これは筆者の推測になってしまうが、制御系のアップデートでバッ
テリーをより効果的に使えるようになったのではないだろうか。BEV開発の知見とノウハウが、この48Vマイルドハイブリッドにも活きているのかもしれない。

フィーリング面ではストレスなく回るエンジンや明らかに雑味が抑えられた澄んだサウンド、DCTのメリットが活きる小気味良さなど、内燃機関としての魅力もより増していると感じた。マニュアルモードを使いながら走らせるとほど良いスポーティさがあり、ベーシックなパワートレーンにしておくのはもったいない。

燃費は一般道〜高速道路〜ワインディング路を走って12〜13㎞ /Lといった感じだが、高速道路のみなら15 ㎞ /L以上は楽勝で、少し気を遣えば20㎞ /Lに迫る数値も。ちなみに通常走行では走行中にアクセルペダルオフでもエンジン停止はしないが、ACC使用時は走行中にエンジン停止を積極的に行ってくれる。

走りの深化と同時に機能面も大幅アップデート

フットワークに関するアップデートはアナウンスされていないが走らせると明らかに違う。V60は
フロントまわりが従来モデルよりも若干軽くなったことで、回頭性の良さや前後のグリップバランス
が適正化されており、スポーツワゴンの旨味が増している。

画像: MHEVは一粒で二度おいしいパワートレーンである。(左:XC40 アルティメット B4 AWD、右:V60 アルティメット B4)

MHEVは一粒で二度おいしいパワートレーンである。(左:XC40 アルティメット B4 AWD、右:V60 アルティメット B4)

一方、XC40はクルマの動きが従来モデルよりも穏やかで落ちつきが増しており、兄貴分のXC60にキャラクターが近づいた。

これらに加えて、「見た目」の部分もシッカリと手が入る。エクステリアはV60がリアバンパーとアルミホイールのデザイン、XC 40がヘッドライト(上級モデルには84個の光軸を持つピクセルLEDヘッドライトを設定)、フロントバンパー、アルミホイールのデザインを変更。より端正な佇まいにアップデートされている。

インテリアは両モデル共にGoogle インフォテイメントシステムと新デザインのメーターを採用。Google の便利さは言わずもがな、メーターデザインはボルボのインテリアデザインの良さを損なわずに先進性を引き上げている。さらに細かい部分になるがPM2.5センサー付きのエアピュリファイヤーも装着。

その一方で、各種機能設定はユーザーの使用頻度に合わせて集約化。従来モデルにあったドライブモードは廃止(XC40はオフロードモードのみ設定)された。

グレード展開も一新されている。従来はモメンタム/インスクリプション/Rデザインに対して、モメンタム相当の「プラス/プラスプロ(XC40のみ)」、インスクリプション相当の「アルティメット」とシンプルな構成に。個人的にはRデザインが消えたのは残念だが・・・エレガント路線になったということだろう。

そろそろ結論にいこう。48Vマイルドハイブリッドはボルボの中ではもっともベーシックな電動化ユニットとなるが、その本質は「電動化」と「内燃機関」、両方の旨味を味わうことができる、ある意
味「一粒で二度おいしい」パワートレーンと言ってもいい。そして、昨今大きく変わり始めているボルボの中で、少しだけ「昔」を思い出させてくれる存在である。(文:山本シンヤ/写真:井上雅行)

ボルボ V60 アルティメット B4主要諸元

●全長×全幅×全高:4780×1850×1435mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1710kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:145kW(197ps)/4750-5250rpm
●最大トルク:300Nm/1500-4500rpm
●モーター最高出力:10kW(000ps)/3000rpm
●モーター最大トルク:40Nm/2250rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:15.4km/L
●タイヤサイズ:235/45R18
●車両価格(税込):639万円

ボルボ XC40 アルティメット B4 AWD主要諸元

要諸元
●全長×全幅×全高:4440×1875×1655mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1720kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:145kW(197ps)/4750-5250rpm
●最大トルク:300Nm/1500-4500rpm
●モーター最高出力:10kW(000ps)/3000rpm
●モーター最大トルク:40Nm/2250rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・53L
●WLTCモード燃費:14.2km/L
●タイヤサイズ:235/50R19
●車両価格(税込):569万円

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