2022年12月5日、第9回「2022 NCAP & カーセーフティ フォーラム in 東京」が開催された。リアルの開催は2019年以来なのだが、クルマのテクノロジーの進化に合わせて評価基準も進化しなければならない時期が迫っていた。

2030年に向けて、ユーロNCAPは大変革する

画像: 「2022 NCAP & カーセーフティ フォーラム in 東京」で講演する、アンドレ・ジーク氏。

「2022 NCAP & カーセーフティ フォーラム in 東京」で講演する、アンドレ・ジーク氏。

NCAP(New Car Assessment Programme:新車アセスメント プログラム)とは、自動車の安全性を衝突実験やシミュレーションなどにより検証し、その結果を公表することでユーザーはクルマを購入するときの安全性の指標とし、メーカーはより安全な自動車の開発を目指すという目的で生まれた消費者団体だ。

ここで紹介しているNCAPは、ヨーロッパのNCAP、通称ユーロNCAPのことだが、ここでは単にNCAPとする。日本のJNCAPをはじめ、いまや世界各国や地域に同様の団体が存在している。2022年現在、NCAPはヨーロッパ9カ国の政府と5つのNGO(非政府組織)などがメンバーとなっている。

今回のフォーラムでは、「2030年に向けたユーロNCAPのロードマップ」として、NCAP ストラテジーグループ レーティングのチェアマンであるアンドレ・ジーク氏による特別講演が行われた。

NCAPでは今まで、評価基準の期間を2年間としていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響などもあり、期間を3年間に延長することになった。また、現在の評価基準は、成人乗員の保護/子どもの乗員の保護/歩行者の保護/安全支援の4項目に大きく分けられ、その中でさまざまな基準を設けて採点し、その結果でいわゆる「5☆(スター)」のような評価をクルマに与えている。

今後は、安全運転支援/衝突回避/衝突対応/衝突後などの項目を加えて、配点のパーセンテージなども変更される。レーティングシステムの詳細は、2026年の開始に向けて、現在検討されているところだという。

つまり、この数年でクルマの自動運転化に向けた安全運転支援技術は飛躍的に進化しており、ペダル踏み間違いへの対応(これはJNCAPからのフィードバックでもある)、体型や性別の違いなどによる事故の影響を考慮することなど、レーティングシステムを変更しなければならない要因が増えているということだ。

クルマから子どもを降ろし忘れるのは、日本だけの問題ではない

画像: フォーラムの後半では米国と中国とをオンラインで結んでパネルディスカッションが行われた。

フォーラムの後半では米国と中国とをオンラインで結んでパネルディスカッションが行われた。

また、商用車においても乗用車と同様の安全基準で(レーティングは異なるが)評価することや、大型トラックの都市部流入への対応、さらには自動運転車やシェアモビリティに対しては、どのような評価基準を与えるかなどが、2026年に向けて検討されている。

衝突の評価基準も、脳への損傷が重要視され、とくに衝突時に乗員同士の頭がぶつかることによる影響なども考慮されている。また、EVが増えている現状で事故後の乗員救出のためのレスキューシートを備えるとか、子どもの乗員保護(チャイルドシートを含む)、そして日本でも問題になっている、クルマから子どもを降ろし忘れないための対策なども評価基準の対象となっている。

アクティブセーフティでは、歩行者や自転車/オートバイなどの複雑な動きへの対応、ドライバーモニタリングシステムや標識認識機能、新たな衝突実験の基準など、クルマの安全技術や運転支援技術の進化に対応したレーティングシステムを決めるために、NCAPは大変革の時期にきているようだ。

フォーラムの後半では、IIHS(米国道路安全保険協会)プレジデントのデヴィッド・ハーキー氏と、CNCAP(中国 NCAP)のチャン・ユンロン氏との3氏がオンラインでパネルディスカッションを行い、地域におけるレーティングシステムの違いや今後の展望などを話し合った。

NCAPによる新しいレーティングシステムは、いずれJNCAPにもフィードバックされることだろう。技術の進化に対応して、レーティングシステムのハードルが高まっても、5スターを獲得できる安全なクルマが増えていくことに期待したい。

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