究極の価値観が宿る触感。高いレベルでの違いを表現
1919年に英国のロンドンで誕生したベントレーは、その100年を超える歴史の中で紆余曲折はあったものの超高級車メーカーとしてのブランドを見事に確立している。どの車種もスポーティであることは一度そのハンドルを握って走ってみれば納得できるし、その哲学は創業当初からレースに挑みルマン24時間レースで優勝を重ねたことでも証明されている。
取材車のベントレー コンチネンタルGTCは、スペシャルペイントの「アークティカ」という白いボディカラーに「クラレット」の赤いソフトトップがアクセントとなり、ただでさえカッコ良いオープンカーの洗練度がさらに高められている。
30km/h以下なら走りながらでも開閉可能なソフトトップをオープンにすれば「リネン(クリーム色)」と「ホットスパー(赤色)」の上質なレザーで美しく設えられたインテリアに見惚れてしまう。ダッシュボードは上面も下面もセンターコンソールも含めて、すべてホットスパー色のレザーで包まれている。この赤の色は、派手過ぎずに上品さを保った、実に良い色合いだ。
シートと同じように2トーン仕上げになっているステアリングリムは、外側が赤、内側をクリームに分けられている。そのクリームのところに赤い糸でステッチが施されているので、ここでもお洒落な感覚と高級感を存分に味わえる。
シートのサイドサポート部分とドアの内張りのクリームの部分には、キルティングのような手のこんだ立体的な模様が仕立てられて、ここにも格別な高級感が漂う。
インテリアの隅々まで目を移しても入念な仕上げは変わりなく、クラフトマンシップによる手作りに近い工程で仕上げられていることが実感できる。見ても触れても美しく、その素晴らしい仕上げに感嘆しない人はいないだろう。
この上質さは、単に良い素材を集めて仕上げているだけでなく、さらに上の工芸品の領域にまで踏み込んだものだ。手触りに優れ、あらゆる角や縁も柔らかな丸みを帯びているので、人に優しい感じを受ける。超高級車というのは、こういう仕上げを備えたクルマのことを言うのだと、お手本を示して教えてくれている気がする。
幸いなことに、僕はこのような超高級車にも触れる機会があり、実際に見て触って溜め息をつくことができる。一般的には、このような別世界感を味わえる人の数は多くないだろう。しかし日々の生活から、このレベルが標準だと考える富裕層もいる。そして、そのような世界の人たちは、よほどのことがない限り、この高いレベルからは降りられないはずだ。
ソフトトップを閉じてもカッコ良いが、個人的には真夏の炎天下、あるいは雨が降っていない限りはぜひオープンで走りたい。その走る姿は、閉じているよりも絶対にさらにカッコ良いと思うからだ。
ボンネットとキャビン、トランクリッドがフラットになっていて、ソフトトップはカバーの下にきれいに収納される。そのラインが、豪華クルーザーに乗っているかのように思わせてくれる。