斬新で美しいスタイリングを初代から継承
レンジローバー車のラインナップでトップに君臨するのは、ブランド名でもあり長き伝統を備えるレンジローバーである。そしてブランドの門戸を広げ、多くのユーザーたちがレンジローバーの世界観を体感できるという役割も果たしてきたのが、レンジローバー車の中では全長4380mmともっともコンパクトなイヴォークだ。
イヴォークの初代モデルが発表されたのは2010年のこと。それまでのSUVは、ほぼ例外なくオフロードでの高い走破性を印象づけるべく、そのどこかにタフでヘビーデューティな要素を備えていた。それに対して、コンパクトであることも特徴とするイヴォークは、他のモデルとはまったく異なる、先進的かつ都会派とも表現できるスタイリッシュなデザインで登場して、世界に衝撃を与えたのだ。さらにボディは5ドアとともに3ドアが用意され、後者をあえて「クーペ」と呼ぶなど、現在につながるSUVの新しい価値観が提示されていた。
もちろん、見た目だけではない。直列4気筒エンジンを横置きするパワートレーンのレイアウトながら、レンジローバーの一員としても相応しい走破性を装備。加えて、前輪駆動モデルもラインナップし、さらには画期的なコンバーチブルまで登場させた。
こうして、見事に時代の流れを掴まえた個性的なイヴォークは人気を呼ぶとともに、レンジローバーブランドの方向性をも転換させる存在となったわけだ。現行イヴォークは18年にフルモデルチェンジされた2代目で、初代から継承される斬新で美しいスタイリングが最大の特徴だ。
クルマ自体の進化に瞠目。快適さの熟成ぶりを実感
今回、久しぶりにハンドルを握ったのは、22年11月から受注が開始された日本向け特別仕様車、2L直4ターボエンジンを搭載するP250仕様の「ブロンズコレクション キュレーテッドフォージャパン」だ。
このモデルは3種類のボディ色が用意され、取材車のカルパンチアグレイ(プレミアムメタリック)が65台、ソウルパールシルバー(メタリック)も65台、サントリーニブラック(メタリック)が20台の合わせて150台である(価格はカルパンチアグレイ仕様のみ4万円高)。
そもそも「ブロンズコレクション」という仕様があり、外観的には「コリンシアン(コリント様式の/華麗な)ブロンズ」色のコントラストルーフとディテール、サテンダークグレイフィニッシュの20インチホイールが印象的なモデルで、装備類も充実したもの。それをベースに、日本独自の仕様としてさらに多彩な特別装備と実用的なアクセサリーを加えたモデルがこの特別仕様車となるわけだ。
イヴォークは相変わらずカッコいいなぁ、と思いながら乗り込み、走り出すと同時に驚きがあった。動き出しからして、とても滑らかなのだ。エンジンと9速ATのマッチングが、以前に乗ったイヴォークよりも大幅に洗練されている。シフトチェンジ時のショックなどは、ほぼ感じられずスムーズ。
モーターのアシストが入るMHEV(マイルドハイブリッド)なのかと勘違いしたほどだ。さらに、乗り心地もやはり進化していて格段に快適性が向上している。20インチタイヤ装着とは思えないほどだ。かつては低速域での微振動が気になったりもしたイヴォークだが、この「23モデルイヤー」でそんな不満はまったく覚えなかった。見た目も乗り味も秀逸。
レンジローバーだけでなくランドローバー、ジャガーもイヤーモデルごとに細かな改良や変更が加えられ、熟成が進められているということは知っていた。だがそうした改良の内容については、ほぼ外部には伝わってこない。実際に試乗してみないとその進化や熟成の度合いはわからないのだ。
おそらく他のイヴォークでも、同様な進化を体感できるはずだ。ファッショナブルな実力派ならではのマルチプレイヤーぶりを、ぜひ試乗して体感してみてほしい。(文:Motor Magazine編集部 香高和仁/写真:井上雅行)
レンジローバー イヴォーク ブロンズコレクション キュレーテッドフォージャパン主要諸元
●全長×全幅×全高:4380×1905×1650mm
●ホイールベース:2680mm
●車両重量:1920kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:183kW(249ps)/5500rpm
●最大トルク:356Nm/1500-4500rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・67L
●WLTCモード燃費:8.9km/L
●タイヤサイズ:235/50R20
●車両価格(税込):833万円