フィアット500eと同じパワートレーンを採用したアバルト初のBEV。そこにアバルトらしさはあるのだろうか、と思いつつテストドライブしたアバルト500eには、昔から何ひとつ変わらないアバルトのストーリートカーづくりの哲学が貫かれていた。(Motor Magazine 2023年7月号より)

コーナーの立ち上がりでホイールスピン。この過激さがイイ

びしゃびしゃに濡れたバロッコのテストコースで、695コンペティツィオーネと新しいアバルト500eを全開で乗り較べられた。695は、今もって第一級のやんちゃ坊主であり、どこに飛んでいくかわからないような危うさ込みで、とてもエキサイティングだ。だが、ブランド初の電動ホットハッチに乗り換えると、途端にそれが古めかしいものに感じられる。

画像: クローズドルーフのほかに電動オープントップも用意される。

クローズドルーフのほかに電動オープントップも用意される。

いや、良し悪しの問題ではなく。電動サソリは、BEVらしい洗練を感じさせながら鋭く加速し、コーナーをミッドシップにも似た感覚をともなって正確かつシャープに曲がり、ミスしてテールを泳がせてもアクセルペダルひとつでコントロールできる。コーナリングスピードと中間加速は、695より確実に速い。

さらにはコーナーの立ち上がりでホイールスピンするくらいの過激さも持っていたし、気が向けばサウンドジェネレーターでレコルトモンツァそのものの快いサウンドを耳にしながら走ることだってできる。BEVであることを最大限に活かした、まさに新世代のアバルト。間違いなくおもしろい。

内燃エンジンの595/695も最高に楽しくて気持ちいいクルマだが、電気のアバルト500eもまったく負けてない。表現方法が異なるだけで、同じようにニヤリとさせてくれるのだ。

画像: サソリのエンブレムも電動化モデルを思わせる意匠に。

サソリのエンブレムも電動化モデルを思わせる意匠に。

500eと共通のバッテリーとモーターを用いつつ、システム内のロスを徹底的に排除、制御の変更で37psと15Nmを増強した最高出力155ps、最大トルク235Nmのパワートレーン、バネのレートやダンパーの減衰をアップグレードしたサスペンション、さらにリアブレーキにまでディスクを奢る。

素材の持ち味を活かしながら各部をチューンナップして速さを磨き上げる手法は、昔ながらのアバルトのストリートカー作りと何ひとつ変わらない。ブランドとしての哲学は電動化の時代を迎えてもブレずに貫かれてる。ファンとしてはそこにも感激させられる。

航続距離はWLTCモードで265kmに過ぎないが、それでも内燃エンジン好きの僕が初めてマジメに欲しいと感じたほど魅力的な、電動ホットハッチだった。(文:嶋田智之/写真:ステランティスジャパン)

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