BMWのXシリーズの人気のコンパクトSUVがフルモデルチェンジした。そして、そのX1に新たに電動化モデルのiX1もラインナップに加わった。ガソリンエンジン車と電気自動車、その似て非なるモデルの違いとは。(Motor Magazine2023年7月号より)

一級のスポーツカー並みの加速力を誇るiX1

そんな『i』から、表記からはこちらの方がヒエラルキーの上位にあることを連想させられる『30』という数字が振られたiX1に乗り換えると、当然ながらまず印象的なのは「静かでスムーズ」というEV全般に共通する動力性能のキャラクター。

画像: BEVらしいスムーズで静かな走りに加え、力強い加速力のiX1。優れたスペースユーティリティも併せ持つ。(iX1 xDrive30 Mスポーツ)

BEVらしいスムーズで静かな走りに加え、力強い加速力のiX1。優れたスペースユーティリティも併せ持つ。(iX1 xDrive30 Mスポーツ)

さらに予想を超えていたのはその絶対的な加速力の高さで、実は0→100km/h加速タイムは5秒台と抵抗なく「一級スポーツカー並」と表現することのできるポテンシャルを備えているというのだからそれもそのはず。

加えれば、一見回生力の調整用かと思われたステアリングホイール左側にレイアウトされたパドルを引くと、秒間のカウントダウン付きでブーストモードが選択される点も見どころ。

実際、それを引くと一見のスタイリングには不釣り合いと思えるほどの「準爆速」とも表現をしたくなるすこぶる強力な加速力が、前後アクスルそれぞれに備えられた2基のモーターから最高出力と最大トルクが200kWと494Nmというスペックで発揮されるようになるのである。

そんな強靭な動力性能を実現させながらも、同時にこのクラスのSUVらしいユーティリティ性はしっかり確保されている。後席使用時と後席折りたたみ時のラゲッジルームの容量は490Lと1495Lというデータで、さすがにX1の540Lと1600Lという数値には差を付けられてこそいるものの、それでもこのクラスのモデルとしての競争力は十分にありそうだ。

iX1ではより強調されたBMWらしい軽快な走り

一方、iX1には標準仕様より20mmものローダウンが図られる「アダプティブMサスペンション」が標準で採用されることもあって、前述した「BMW車らしいフットワークのテイスト」はより強調されているようにも感じられた。

画像: iX1(左)とX1を2台並べてみると、全高が1620mmと1645mmと25mmほどX1が高く、最低地上高も172mmと205mmと33mmほどX1の方が高いことがわかる。

iX1(左)とX1を2台並べてみると、全高が1620mmと1645mmと25mmほどX1が高く、最低地上高も172mmと205mmと33mmほどX1の方が高いことがわかる。

すなわち、X1に対して400kg近い重量のハンディキャップは抱えながらも、自在で俊敏なハンドリングの感覚はしっかりキープされているということ。

ただし、しなやかな感触やクルージング時のフラット感に欠けるという印象もやはり同様で、リラックスした走りのテイストを味わいたいユーザーには、好適とは言い難いセッティングではあるかも知れない。

実は、そんな新しいX1シリーズはヨーロッパの市場に向けにはすでにディーゼルエンジン搭載モデルや2輪駆動モデル、さらにガソリンエンジンをシステムに加えたプラグインハイブリッドなど多彩なバージョンもローンチされていて、日本よりも遥かに幅広い選択肢が用意されている。

しかし、今のところそれらが日本でも選べるようになるのか否かといったアナウンスは日本のインポーターからはまだ聞かされていない。(編集部註:2023年5月26日、BMWジャパンはプレミアム スモールコンパクト SAVのX1に、ディーゼル+マイルドハイブリッドを搭載した「X1 xドライブ 20d」を追加設定。デリバリーは、2023年6月からを予定)

けれども、こうしたモデルのキャラクターとのマッチングを想定すると、少なくとも高いクルージング能力と燃費性能が期待できるディーゼルエンジンモデルは、その導入を強く待望したくなるところでもある。

日本国内での大出力充電器のインフラ整備が遅れ、またテスラやポルシェ/アウディ/フォルクスワーゲンが進めるようなブランド独自の充電網拡充のプレミアムチャージングアライアンスのような話題も耳に届くことのない現状においては、やはりより強く待ち望まれているのはプラグイン電動化モデルよりもすでに従来型に用意されていたディーゼルモデルと考えられる。

激戦のSUV市場へ新たに加わったBEVのプレミアムスモールコンパクトモデルのiX1は、このクラスの主力モデルとなることができるのだろうか。(文: 河村康彦/写真:井上雅行)

BMW iX1 xDrive30 M Sport主要諸元

●全長×全幅×全高:4500×1835×1620mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:2030kg
●モーター最高出力:前140kW(190ps)/8000rpm、後140kW(190ps)/8000rpm
●モーター最大トルク:前247Nm/0-4900rpm、後247Nm/0-4900rpm
●バッテリー総電力量:66.5kWh
●WLTCモードEV航続距離:465km
●トランスミッション:ー
●駆動方式: 4WD
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):668万円

BMW X1 xDrive20 xLine主要諸元

●全長×全幅×全高:4500×1835×1645mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:直4DOHC
●総排気量:1998cc
●最高出力:150kW(204ps)/5000rpm
●最大トルク:300Nm/1450-4500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・54L
●WLTCモード燃費:12.9km/L
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):556万円

This article is a sponsored article by
''.