ホンダ「バタバタ」の再来を感じさせるコンセプト
ホンダは、既存の自転車を電動アシスト化するサービス「SmaChari(スマチャリ)」を新たに開発した。プロジェクトを主導した本田技研工業(株)の野村真成氏は、自身が学生時代に自転車通学を経験し、より楽に移動できるようになりたいという「バタバタ誕生秘話」に似た"想い"がアイデアの種になったと語る。
「Honda A型(通称"バタバタ")」は、1947年に本田宗一郎が初めてHondaの名で製品化した自転車に装着する補助エンジンだ。当時、宗一郎は妻が自転車をこいで遠くまで買い物へ向かう姿を見て、楽にしてあげたいという想いを抱いた。バタバタはそんな「人想い」な発想から誕生したといわれる。
実は野村氏はバタバタの存在を知る前から、既存の自転車に後付けできる電動アシスト機能があれば良いなと思っており、必ずしもバタバタをイメージして発案したわけではないという。しかし創業当時から続く人の想いを大切にするというホンダマインドが継承され、実際に製品化されていることが嬉しい。
ちなみに現在の自転車通学に関する状況をホンダが配布した資料の中からお伝えすると、全国で約180万人の高校生が自転車通学をしているという<出典:LINEリサーチ(2020)>。そしてホンダが高校生に対して独自のアンケートを実施すると、電動アシスト自転車が欲しいと回答する人はアンケートに回答した人の全体の48%にもなった。
スマチャリ搭載の第一号車は、良い意味で電動アシストを感じさせない乗り味
今回試乗した「RAIL ACTIVE-e」は、スポーツサイクル専門店「ワイズロード」が2023年10月に発売を予定しているスマチャリ初搭載の電動アシスト自転車だ。今後ホンダは、スマチャリ搭載車をあらゆる自転車に展開していくことを目標にしているが、その記念すべき第一号というわけだ。
ちなみにこのプロジェクトを展開するにあたって、ホンダは、自転車ならびに電動モーターのハードウェアに関する開発は行なっていないという。ハードウェアは既存の自転車用モーターを製造する企業によるもので、ホンダは自転車用の電動モーター制御のプログラムならびにコネクト機能といったソフトウェア開発を行う、協業という形で今回の製品化が実現した。
今回、RAIL ACTIVE-eを実際に試乗した場所は、新豊洲Brilliaランニングスタジアムを起点として晴海大橋を渡る往復10分程度の短いコース。しかし晴海大橋は緩やかに長い登り坂が続く、電動アシスト機能を持たない自転車で走るにはなかなかキツいものだった。
スマチャリを搭載したRAIL ACTIVE-eは走り出しから、アシストが働いているかどうかを接続されたスマートフォンで状況を確認してしまうほど存在感がない。しかしアシストをオフにすると、途端にペダルが重くなった。そこで確実に"補助"を体験することができた。そしてスマチャリのAI制御による電動アシストの自動調整機能によって、坂が続くとアシストが徐々に強くなる。気づけば長かった坂を楽々と登り切ることができたのだ。
野村氏によると、電動アシストを感じさせない自然な走行フィールを目指したといい、確かにそれを感じることができた。一方で、AI制御によるアシスト以外にもマニュアルでアシストの強さやレスポンスの早さを設定することができる機能も備えるため、好みに合った走行を楽しむことができそうだ。