21台のSLRマクラーレンがMTCに集結!
メルセデス・ベンツ SLRマクラーレンは2003年9月にフランクフルト モーターショーで発表されてから、間もなく20年を迎える。これを記念して、MTCではさまざまな活動が行われている。
メルセデス・ベンツとマクラーレンのF1にインスパイアされたコラボレーションから生まれたパイオニア的スーパーGTは、マクラーレンの物語におけるユニークな一章となる。MTCのアクティビティはこれを反映したもので、この車だけでなく、それを世に送り出した人々の功績も称えている。
MTCの会場には、SLRスターリング・モス、SLR by MSO、SLR HDK、SLR 722 GTプロトタイプという、スーパーカーの基準で設計・製造された4台のグランドツアラーが、開発秘話にまつわる品々とともに展示された(車両の概要は後述する)。また、メルセデス・ベンツ SLRマクラーレンのオーナーの国際的なグループであるSLRクラブがMTCを訪れ、車両展示や社員によるプレゼンテーション、そしてSLRクラブ会員による21台の車両展示など、記念イベントを開催し、さらなる彩りを添えた。
では、MTCで初めて組み立てられたスーパーGT、メルセデス・ベンツ SLRマクラーレンのヒストリーを振り返ってみたい。
F1にインスパイアされて登場したパイオニア的スーパーGT
マクラーレンとメルセデス・ベンツは1995年から2009年までF1のパートナーであり、その間にマクラーレンは4度のF1世界選手権で優勝を果たした(1998年にコンストラクターズチャンピオン、1998年、1999年、2008年にドライバーズチャンピオン)。マクラーレンのシャシ開発とカーボンファイバー技術、そしてメルセデスのエンジンパワーというこの強力な組み合わせから、メルセデス・ベンツ SLRマクラーレンが誕生する。
メルセデス・ベンツ SLRマクラーレンのプロジェクトは、1999年にシルバーストーンで開催されたF1イギリスGPで発表され、マクラーレンがメルセデス・ベンツと提携し、その年のデトロイト モーターショーで披露されたコンセプトカー「メルセデス・ベンツ SLRビジョン」を、「プロジェクト7」の名のもとに開発された本格的な市販車として製造することが決定した。
プロジェクト7の最初のプロトタイプは、かつてF1で活躍したマクラーレンのメカニックたちによって製作された。彼らはその後、エンジニアたちとともに中核となるチームを結成し、当時オープンしたばかりのMTCにおいて手作業で組み立てられた最初のマシンとして、生産を開始した。
クルマのフォルムとスタイリングは、メルセデスからのリクエストを、そしてビジョンSLRのコンセプトで表現されたデザインに可能な限り近づけた。F1マシンやロードカーのマクラーレン F1での数十年にわたる経験から学んだカーボンファイバーによるコンポジットの専門知識を活用し、画期的なエンジニアリングによって初めて実現した。
革新的なカーボンファイバー製シャシに組み合わされたのは、メルセデスAMGが開発した5.5LのスーパーチャージドV8で、最高出力は626ps、最大トルクは780Nmを誇る。5速ATを介して後輪を駆動するフロントミッドシップのスーパーGTは、0→62mph(約100km/h)加速は3.8秒、最高速度は208mph(約333km/h)と、当時のスーパーカーに匹敵するパフォーマンスを発揮した。
プロジェクト7としてスタートしたメルセデス・ベンツ SLRマクラーレンの生産は、2009年12月に終了した。その間にロードスターや722エディション、スターリング・モス エディションなど、合わせて2000台以上が生産された。