久々のM専用モデルはV8ツインターボエンジン+モーターのPHEVだった。しかもスポーツカーではなく、SUVだったことはさらに見る者を驚かせた。だが、XMのハンドルを握れば、より大きな驚きと歓びを感じるはずだ。(Motor Magazine2023年11月号より)

過去へのオマージュ的要素と最新メカを専用ボディに凝縮

BMWの100%子会社BMW M社がプロデュースするモデルは、サーキットも一般道も走れることを前提に作られている。

画像: 車両重量は2710kgもあるが、4.4L V8ツインターボエンジンとモーターのパワーでどの速度域でも軽々と加速していく。0→100km/h加速は4.3秒。

車両重量は2710kgもあるが、4.4L V8ツインターボエンジンとモーターのパワーでどの速度域でも軽々と加速していく。0→100km/h加速は4.3秒。

2023年1月に発表されたXMは、専用ボディを持つ珍しいモデルだ。というのは、Mモデルの代表でもあるM3やM4クーペは3シリーズセダン、4シリーズクーペがベースにあり、それにオーバーフェンダーやMモデル専用キドニーグリルに変えたり、カーボン素材を使ったりというアレンジはするものの、基本構造はベース車と同じだからだ。

XMは1970年代後半に登場した初代のMモデルであるM1以来のM社オリジナルデザインなのだ。正確にはZ3をベースにしたMクーペもM社のオリジナルデザインだが、派生車種という側面もあるし、その後にZ3クーペとしてMモデルでないものも販売された点もM1、XMとは異なる。

話をXMに戻そう。ミッドシップスポーツカーのM1に対し、XMはSUVと両車には大きな違いはあるが、M1をオマージュした部分もあっておもしろい。たとえば後部に付くBMWのエンブレムだが、ボンネットやトランクリッド、バックドアの中央に1個がBMWの標準だが、M1は左右に1個ずつ付けられ、XMも同じく2個備える。

どこにあるかわかりにくいが、テールゲートのガラスの左右の上部にある。またCピラーを横から見たときのちょっと角張ったデザインもM1を意識していると開発者が説明してくれた。

XMはモデル初のプラグインハイブリッド(PHEV)でもある。車重2.7トンでサーキットを走れる性能と排出ガスや通常走行時の燃費などを考慮するとPHEVが必然なのだろう。

エンジンは「S68B44A」と名付けられた4.4L V8ツインターボだ。エンジン型式の最初の文字がSから始まることは、M社が開発したエンジンであることを示し、最高出力489ps、最大トルク650Nmを誇る。

エンジンと電気モーター、いいとこどりのシステム

これだけでも十分速そうなのに「GC1P28MO」という型式の電気モーターの力が加わる。こちらは最高出力145kW、最大トルク280Nmを発揮する。システム全体の最高出力は653ps、最大トルクは800Nmと<超>強力だ。

画像: エンジン単体でも最高出力489ps、最大トルク650Nmを発生。エンジンカバーの赤い差し色や蜘蛛の巣のような補強材も新鮮だ。

エンジン単体でも最高出力489ps、最大トルク650Nmを発生。エンジンカバーの赤い差し色や蜘蛛の巣のような補強材も新鮮だ。

この電気モーターはトランスミッションのトルクコンバータの代わりに装着されており、この点から考えれば、どう作動するかも理解できるだろう。つまりエンジンだけでも走れるし、エンジンと切り離して電気モーターだけでも走れ、必要に応じてエンジンと電気モーターの両方の力で走ることもでき、回生もこのモーターで行う。

トランスミッションの後部で左側に回転力を取り出し、電子制御の湿式多板クラッチを介して前輪に動力を伝える仕組みはBMWのxドライブと同じだ。

なお、駆動用リチウムイオンバッテリーは29.5 kWhと総電力量は意外と大きく、条件にもよるが電気だけで100km近く走れる。これは最近のPHEVの傾向でもある。

オリジナルデザインのXMだが、実物は迫力があり、インパクトが強い。カッコ良い、悪いという次元の話ではなく、強く印象に残るデザインである。そして見慣れてくると最初のインパクトは薄れ、親しみを感じるようになる。 

インパクトの強さはその大きさも関係する。XMのボディサイズは、全長5110×全幅2005×全高1755mm、 ホイールベース3105mmでX7に近い。ホイールベースが同一ということは同じプラットフォームをベースにしていると考えていいだろう。

BMW らしく重量配分は前49%(1320kg)、後51%(1390kg)と走りを重視した特性だとわかる。また、車重がX7のV8搭載車より100kg重いが、これはモーターとリチウムイオンバッテリーが増えたためと考えられる。

ちなみにXMは車重2710kgの巨体だが、0→100km/h加速タイムは4.3秒。この速さはやはりM モデルと言えよう。

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