2010年、アルピナ B3 ビターボが「B3S ビターボ」に進化して登場した。BMW3シリーズのフェイスリフトを契機に新しくなったが、3L直列6気筒エンジンの最高出力は360psから410psへ、最大トルクは500Nmから540Nmへと向上。手が加えられたスポーツシャシによる挙動はしなやかで、インテリアの作り込みも一層精緻になっていた。ここではMotor Magazine誌がアルピナ本社のあるドイツ・ブッフローエで行った独自試乗テストの模様をお伝えしよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年9月号より)

B3ビターボから「B3S」ビターボへの変化は主にエンジン

BMWモデルをベースにスポーティでエクスクルーシブなスペシャルエディションをプロデュースするアルピナから新製品発表のニュースが届いた。これまで販売を続けていた3シリーズベースのB3ビターボが、ベースモデルのフェイスリフトを契機にB3Sビターボへと進化し、テスト車両が完成したというのである。

さっそく、南ドイツ、ブッフローエにあるアルピナ社へ向かう。いつも不思議に思うのだが、この町は風光明媚、牧畜で有名なアルゴイ地方の真ん中にあり、ハイテク産業とはほとんど関係なさそうな場所である。しかし、今から45年前にブルクハルト・ボーフェンジーペンがこの町でウエーバーキャブを使ったBMWのパワーアップキットを開発し、その販売を始めたのは間違いのない事実なのだ。

その後、1989年にはターボシステムを完成させ、その技術力がBMW AGから高く評価され、モータースポーツや開発の分野でもその関係を深め、独立した小規模のカーメーカーへと成長してきたのである。このアルピナの最新モデルが冒頭に述べたB3Sビターボである。

B3ビターボから「B3S」ビターボへの変化は主にエンジンにある。直列6気筒エンジンの総排気量は3Lのまま吸排気システムの高効率化によって最高出力は360psから410psへ、最大トルクは500Nmから540Nmへと向上している。

一方、組み合わされるトランスミッションはB3ビターボと同じZF製6速オートマチックだが、スタートから100km/hまでの加速所要時間は4.7秒、最高速度は300km/hに到達する。

画像: アルピナ B3Sビターボ リムジン。日本導入もすでに決定、車両価格は999万円と発表されている。

アルピナ B3Sビターボ リムジン。日本導入もすでに決定、車両価格は999万円と発表されている。

性能の向上だけではなくクラフトマンシップも成熟

アルピナ本社で筆者を待ち受けていたのは4ドアのリムジンと2ドアクーペの2車種で、ともにカタログ性能は同じである。

4ドア、そして2ドアともにエクステリアデザインはB3から大きな変化はないが、ベースの3シリーズのフェイスリフトにともなって前後のスポイラー形状が微妙に異なっている。ブルクハルト・ボーフェンジーペンの長男で現社長のアンドレアス・ボーフェンジーペンは「アルピナのクラフトマンシップは旧型のスポイラーを切ったり削ったりすることを許しません。たとえフェイスリフトでも、オリジナルに沿ってまったく新しいデザインを決めて、雌型を作ります」ときっぱりと彼らの姿勢を表明していた。

一方、インテリアはほとんど変化はないが、全体の作り込みが一層精緻になり、質感がさらに上がっている。

この私が受けた印象に対してボーフェンジーペン社長は「わが意を得たり」という表情で、「それが機械と人間の差です。機械は同じことを同じように繰り返しますが、人間の技術は熟練とともにどんどん向上して行きます。ですからB3からB3Sへの変化向上は単にパフォーマンスだけでなくクラフトマンシップの成熟という面にも表れてくるのです」と解説を加えた。

画像: インテリアは全体の作り込みが一層精緻になり、質感がさらに上がっている。

インテリアは全体の作り込みが一層精緻になり、質感がさらに上がっている。

 

ランフラットタイヤを装着した3シリーズよりずっと快適

スターターボタンを押すと直列6気筒エンジンは一瞬のクランキングで目覚め、1Lあたり136psという高出力ユニットとは思えないほど、すぐに安定したアイドリングを始める。

タコメーターのスケール内にあるレッドゾーンが6000rpm付近まで広がるのを待って、Dレンジをセレクトし、右足を踏み込むとB3Sビターボは何のためらもなく、まったくスムーズに加速を始める。

ZF製の6速ATはパーシャルな踏み加減ではほとんどショックを感じさせずにシフトを行い、高まった風切り音でドライバーが我に返る時には車速はすでに160km/hを超えている。しかしクルマはまったく安定しており、そのまま加速を続けると、そう時間の経過を見ないうちにスピードメーターの針は軽く200km/hのマークを超え、さらに前進を続ける。

やがて240km/hを超えたあたりから空気の壁の存在が立ち向かってくるが、アルピナの加速力は衰えず究極の300km/hへ向かって突き進んで行く。しかし、行く手を阻む先行車によって最高速度への挑戦は諦めざるを得なかった。

ここまでのパフォーマンスを見ると300km/hのカタログ値は条件さえ揃えば、十分に到達可能であることが感じられた。

もちろん、この速度域で走行するには確実でコントローラブルなブレーキ性能が支えになっていることが重要な条件であり、アルピナはこれを間違いなく約束してくれている。

一般道路での挙動はしなやかで、フロント245/40ZR18、リア265/40ZR18サイズのタイヤと締めあげられたスポーツシャシは、終始ニュートラルなステア特性と高い接地性を提供してくれた。また乗り心地は低速での街乗りを含めランフラットタイヤを装着したスタンダード3シリーズよりずっと快適であった。

最後にこうした性能進化にもかかわらず公式データによる燃費は欧州測定値で100kmあたり9.7L、すなわち10.3km/L、さらにCO2排出量は224g/kmと環境への優しさも忘れていない。まさにアルピナマジックの面目を保っている。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)

画像: 直列6気筒エンジンはま吸排気システムの高効率化によって最高出力は360psから410psへ、最大トルクは500Nmから540Nmへと向上。

直列6気筒エンジンはま吸排気システムの高効率化によって最高出力は360psから410psへ、最大トルクは500Nmから540Nmへと向上。

BMW アルピナ B3S ビターボ リムジン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4545×1815×1420mm
●ホイールベース:2760mm 
●車両重量:1600kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:302kW(410ps)/6000rpm
●最大トルク:540Nm(55.1kgm)/4500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●最高速:300km/h
●0→100km/h加速:4.7秒
※EU準拠

This article is a sponsored article by
''.