この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第13回目は、大人4人が無理なく乗車のできたスズキ スズライト フロンテの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

商用車「スズライト」の乗用車版として登場

2サイクルエンジンの排気量が360ccに引き上げられた改訂軽自動車規格(昭和30年4月施行)にいち早く対応したのが鈴木自工(現スズキ)で、同年7月に商用車の初代スズライトを発売した。

画像: 空冷2サイクルの直2エンジンは21 psと5.2㎏mを発生した。横置きFF方式はまだ過渡期の技術とはいえエポックメイキングだった。エンジンはかなり鼻先に置かれておりフロント荷重を意図的に上げている。

空冷2サイクルの直2エンジンは21 psと5.2㎏mを発生した。横置きFF方式はまだ過渡期の技術とはいえエポックメイキングだった。エンジンはかなり鼻先に置かれておりフロント荷重を意図的に上げている。

この後、昭和34(1959)年には2代目となるスズライトTL(バン)を発売。この時期に早くも日本で2BOXスタイルを完成させていたことは驚きだ。昭和36(1961)年にはTLをベースにしたスズライトセダン360を第8回全日本自動車ショーに参考出品し、これが翌年4月20日、スズライト・フロンテ360として発売された。

基本メカニズムはモノコックボディのフロントにエンジン&トランスアクスルを搭載したFF駆動だが当時は高性能なCVジョイントの入手が困難で、走行時の振動や騒音に悩まされている。

性能が安定したのは昭和38(1963)年。東洋ベアリング(現・NTN)製ボールフィクストジョイント(BJ)を国内初採用してからだが、当時はまだ軸方向にスライドする摺動式CVジョイントがなく、車輪側にBJ、デフ側にクロスジョイントを使って、軸方向の摺動はスライドスプラインで吸収するという過渡期の方式だった。

エンジンは180度クランクの空冷2サイクル直2で21psを発生。トランスミッションは2-3速にシンクロが付くコラムシフトの3速MTを組み合わせるが、シフトパターンが独特で、慣れるまでギア位置を頭に入れて行う必要があった。

画像: これ以上のシンプルさはないようなコクピット。シフトレバーはコラムに配置された3速MTだ。ローはノンシンクロだったが発進時だけなので、影響は少なかっただろう。

これ以上のシンプルさはないようなコクピット。シフトレバーはコラムに配置された3速MTだ。ローはノンシンクロだったが発進時だけなので、影響は少なかっただろう。

サスペンションは前後とも半楕円リーフスプリングを横置きし、それを上下2段配置。上下のリーフスプリングをアップライトでつないだ4輪独立懸架だ。リーフスプリング自体がサスペンションアームの役割を兼ねるのでパーツ点数が減り、耐久性・整備性に優れる。
 
実用面では、大人4人が楽に乗れるキャビンスペースと、リアにトランクルームを備えることが、RRとは決定的に異なるメリットとして評価された。

スズキ・スズライト フロンテ360(1962・TLAA型)諸元

●全長×全幅×全高:2995×1295×1380mm
●ホイールベース:2050mm
●車両重量:500kg
●エンジン型式・種類:T型・強制空冷2サイクル直2
●排気量:360cc
●最高出力:21ps/5500rpm
●最大トルク:5.2kgm/3700rpm
●トランスミッション:3速MT(コラムシフト)
●タイヤサイズ:4.50-12 4P
●新車価格:38万円

This article is a sponsored article by
''.