2007年に初代が登場したマセラティ グラントゥーリズモ。その名からもわかるように高級GTカーとして誕生し、一時空白期間があったものの2022年に2代目が登場した。ICEとBEVを同時に開発するという初の試みが生んだマセラティの新世代GTカーの完成度を、今回はICEのトップモデルである「トロフェオ」の試乗をとおして測る。

期待以上の快適な乗り心地。それでいて十二分に速い

画像: 大柄だがワインディング路もかなり軽快に駆け抜ける。走行モードを「COMFORT」か「GT」にすれば硬さもなく快適な乗り心地だ。

大柄だがワインディング路もかなり軽快に駆け抜ける。走行モードを「COMFORT」か「GT」にすれば硬さもなく快適な乗り心地だ。

ハンドルのスポーク部にレイアウトされたスタートスイッチをプッシュすると、フロントミッドシップされるネットゥーノエンジンは魅力的なサウンドとともに始動する。

スタートしようとハンドルにフィットされるパドルを引いてみても何の反応もないのは、このグラントゥーリズモにはデュアルクラッチなどではなく、オーソドックスな8速ATが備えられているためで、しばしセレクタースイッチを探すと、センターコンソールの上下段モニターの間に隠れていた。

新型グラントゥーリズモでは、「コンフォート」「GT」「スポーツ」「コルサ」という4つのドライブモードを選択可能だが、まずはもっともGTとしての快適さが演出されている「コンフォート」で走り始めた。

まず驚かされたのは、その快適さだ。フロントに265/30ZR20、リアには295/30ZR21というピレリ Pゼロを装着しながら、その乗り心地は巧みな制御を行うエアサスペンションとボディ剛性の高さの恩恵で、常に上質の一語に尽きるのだ。

全方位に死角が見当たらないGTカーでありスポーツカー

画像: エンジンのマウント位置はかなり後ろ寄り。前輪車軸の後方に、バルクヘッドにめり込むように搭載されている。

エンジンのマウント位置はかなり後ろ寄り。前輪車軸の後方に、バルクヘッドにめり込むように搭載されている。

ネットゥーノエンジンの仕上がりも相変わらず否のつけどころがない。

最高出力550psに対して車重が1870kgだから、実際の加速は0→100km/hで3.5秒と聞いてもそれは十分に説得力のあるデータだが、実際の加速感は明らかにそれ以上のものだった。日本にその環境さえあれば、最高速の320km/hに挑むことにさえ緊張感を伴わないに違いない。

GTやスポーツ、そしてコルサといったモードを選択していくと、新型グラントゥーリズモは徐々にスポーティなキャラクターを表してくる。ハンドルはよりリニアなフィーリングに変化し、エアサスペンションも硬めのセッティングに。ワインディングでは必要に応じて効果的に前輪側にも最適量のトルクが送られているから、コーナーでのトラクションには事欠かない。

新型グラントゥーリズモにはどうやらふたつのキャラクターが秘められているようだ。ひとつは最初から触れている高級GTとしてのもの。そしてもうひとつは最先端の技術を駆使したスポーツカーとしてのキャラクターである。

ほかに同様のコンセプトを持つモデルが市場にあるとするならば、それはあるいはポルシェ911ではないだろうか。911のベーシックレンジにラインナップされるカレラ系のモデルは、紛れもなきスポーツカーであると同時にGT的な性格をも持つことは経験済み。こちらもまた、その長い歴史の中で快適なドライビングを実現すると同時に、その性能を飛躍的に高めることに成功しているのだ。

マセラティ グラントゥーリズモ トロフェオ。ようやく日本の道を走り始めたこの最新世代のGT。その完成度はもちろん、ブランドバリューをとっても、それは新しい選択肢として十分に魅力的な存在だったと評価できる。
(文:山崎元裕/写真:永元秀和)

マセラティ グラントゥーリズモ トロフェオ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4965×1955×1410mm
●ホイールベース:2930mm
●車両重量:1870kg
●エンジン:V6ツインターボ
●排気量:2992cc
●最高出力:404 kW(550ps)/6500rpm
●最大トルク 650Nm(66.2kgm)/2500rpm
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:8速AT
●サスペンション形式:前 ダブルウイッシュボーン/後 マルチリンク
●ブレーキ:前 Vディスク/後 Vディスク
●タイヤサイズ :前 265/30ZR20、後 295/30ZR21
●車両価格(税込):2998万円

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