(聞き手:MM編集部 川内優作、写真:井上雅行)
「忙しい世の中から一歩離れるような空間をデザインによって提供したいのです」
──近年のBMWデザインには毎回驚かさますが、その躍動感や存在感のあるデザインは意図的なものなのですか。つまり、ひと目見てそれだとわかるデザインにあえてしているということですか。
ホーイドンク氏:はい。BMWの共通したデザイン言語はスポーティ&エレガンスです。このBMWらしさは、どのセグメントにも表現しています。けれどセグメントによってその表現方法が異なります。例えば3シリーズはダイナミックでありながら凝縮したコンパクトさを表現していますし、7シリーズではトップとしての存在感を示すデザインにしています。またSUVは、ほかのどのSUVよりもダイナミックであることを表現しています。
──逆にJMSでお披露目されたコンセプトモデル「ビジョン ノイエ クラッセ」を拝見した時に、X2をはじめ、XMやiXなどの最近登場したモデルとは違ったシンプルでクリーンな印象だと思いました。それは再びデザインの方向性を変えたという認識で間違いないでしょうか。
ホーイドンク氏:その通りです。今回披露したビジョン ノイエ クラッセというモデルは、この1つだけを作ったということではなく、今後のBMWのクルマ全世代にそれを意識したモデルが出てくるということを示しています。そして、いまおっしゃったようにデザインはよりクリーンさが増しています。例えばパーツの数、それからエレメントのデザイン要素は少なめにしています。けれどエモーションやダイナミックは維持することを意識してデザインしました。
──なぜデザインの方向性を変えられたのかをお聞かせください。
ホーイドンク氏:いま世の中がものすごく早く変化をしています。そして、どんどん複雑になっていますよね。また、私たちのお客様も世界中で大変忙しい毎日を送っておられます。そうした複雑な世の中で生きていらっしゃるということを考えますと、私たちとしては我々(BMW)のデザインでそれとは違ったことを感じてほしいと思っています。具体的には、あまり複雑ではないものを提供して、忙しい世の中から一歩離れるような空間を提供したいなと思ったのです。
ただし、テクノロジーは進歩していますので実はクルマの中は非常に複雑です。けれどそれはお客様には見せない裏側であって、お客様の目に見えるものはシンプルに、ということを意識しています。そしてそれは外装だけではなく、内装も同様です。インフォテインメントは我々のテクノロジーによって、お客様の使い方をどんどん覚えて、それぞれのお客様に合わせた設定に変わっていくインテリジェンスも備えています。
つまりテクノロジーはとても使いやすく提供しつつも、その複雑さをお客様には見せずにシンプルですっきりとしたクルマに見えるようにデザインしています。