新世代の「V8」はドライバーの感性に寄り添う味付け
ワークスV8は新車扱いとはいえ、あくまでリプロダクションモデルとして復刻されたもの。新世代ディフェンダーのV8搭載モデルは、98年以来の「プロダクション V8」の復活であり、まっさらのニューモデルとして新たな価値を提案しています。
先日開催された試乗会では「110 V8」に搭載することができました。3つの長さが用意されるディフェンダーの中では中間サイズのボディスタイルで、5人乗り、全長4945×全幅1995×全高1970mm、ホイールベースは3020mmとなります。ボディカラーはサントリーニブラック、オプションを除いた車両本体価格は1588万円でした。
都内一般道での試乗ということで、自慢のオフロード性能を確認することはできませんでしたが、低速域でのドロドロした脈動感が「V8積んでるぞ!」という気分をしっかり盛り上げてくれます。おかげでとんでもない加速を想像して、アクセルペダルを踏み込む時には少しばかり緊張してしまいました。
しかしそこはさすがのランドローバー!というべきでしょうか。5L V8DOHCにスーパーチャージャーから想像されるような、初速でドカン!ではありません。低速から十二分に力強さは感じられるものの、トルクの伸びは非常にスムーズかつフラット、息の長い加速感を楽しめるタイプです。
ドライバーの感性をむやみに刺激するのではなく、心地よく寄り添ってくれている、そんなある種の「余裕」が感じられるような気がしました。
路面とのほどよい対話感が、扱いやすさにつながる
同様に、足回りのセットも極めて躾の良さが際立ちます。路面の凹凸はやや素直に伝えてくるものの、不快感は覚えません。試乗車は22インチの大径タイヤを装着していましたが、それを考えればとてもスマートな乗り心地と言っていいでしょう。
身のこなしには確かに、それなりのマスが感じられます。とはいえ都内でゆるいカーブをゆっくり曲がっている程度では、腰高感や不安定感を覚えることはありません。ほどよく引き締まった身のこなしによって、クルマとのちょうどいい一体感が生まれています。大柄なボディの割にクルマの挙動、4輪の接地感などが的確に伝わってくるので、オフロードでも扱いやすそうです。
大排気量、ハイパワーのV8エンジンを搭載する以上、そうおうの迫力や押しの強さ、他を圧倒する速さが求められることは確か。ディフェンダー V8は、そうした「要件」をしっかり抑えながらも、見た目の高級感や絶対性能の高さを誇るだけのクルマではありませんでした。
100年に1度の変革の時代にあってなお、「シリーズⅢ」以来の伝統に裏付けられた価値は、ディフェンダー V8の独自性と普遍的価値をしっかり支えています。願わくばこれからも、こうした心躍るヘリテイジを、心置きなく楽しめる「変革」が起こると良いなぁ・・・。(写真:伊藤嘉啓、ジャガー・ランドローバー・ジャパン)
ランドローバー ディフェンダー V8系 価格
ディフェンダー90 V8:15,000,000円/CARPATHIAN EDITION:15,980,000円
ディフェンダー110 V8:15,880,000円/CARPATHIAN EDITION:16,850,000円
ランドローバー ディフェンダー110 V8 主要諸元
●全長×全幅×全高:4945×1995×1970mm
●ホイールベース:3020mm
●車両重量:2450kg
●エンジン:V8 DOHC スーパーチャージャー
●最高出力:386kW(525ps)/6500rpm
●最大トルク:625Nm/2500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・90L
●車両価格(税込):15,880,000円