ブランドとして独立した「ディフェンダー」のDNAとは
振り返れば、「Proud Creators of Modern Luxury(モダン・ラグジュアリーの誇り高きクリエイター)」を謳うジャガー・ランドローバーが、新たなCIを発表したのは2022年6月1日のことでした。
この時、Jaguar/Range Rover/Defender/Discoveryの4ブランドを総べる「HOUSE OF BRANDS」として、それぞれのブランドが持つDNAをより濃密に追求していく姿勢が、明確にアピールされています。
2024年モデルにおける「ディフェンダー」のラインナップ拡大は、そんなブランド戦略に則った展開、と言えるでしょう。4月27日(木)から受注が開始された2024年モデルでは、「90」にディーゼルエンジン、「130」に5人乗り仕様「OUTBOUND(アウトバウンド)」など、待望されていた多様な仕様が追加設定されました。
ディフェンダーMY24の進化には、ブランドとして個性が確立される中にあって、偉大なる先達としての「クラシック ディスカバリー」のDNAが濃密に息づいていることが伝わってきます。グラフィックデカールやイルミネーション付きプレートで先代譲りの冒険心を今ふうに再構成した「COUNTY(カウンティ) エクステリアパック」も、ユニークな提案と言えるでしょう。
とくに注目したいのは、特別なディスカバリーの代名詞と言えるV8搭載モデルの設定です。本国発表からはだいぶ遅れてしまいましたが、ようやく日本市場にも導入が始まりました。「90」「110」に「V8」と「CARPATHIAN EDITION(カルパチアン エディション)」の2グレードが、それぞれ設定されています。
スーパーチャージャーで過給される5L V8エンジンは最高出力525ps、最大トルク625Nmを発生。0→100km/h加速は5.2~5.4秒、最高速度は240km/hを達成しています。
現時点でおそらく「最強」と言えるのは、2023年10月に限定100台が販売された「DEFENDER 110 CARPATHIAN EDITION CURATED FOR JAPAN」でしょう。22インチホイールやドライブレコーダーなどの人気オプションを標準装備して、1749万6100円~1770万5100円となっています。
V8ユニットへのオマージュとして生まれた「ワークスV8」
そもそもV8エンジンとディスカバリーの歴史は、ディフェンダーの前身である「ランドローバー シリーズⅢ」に1979年から搭載された、V8ユニットから始まります。排気量は3.5Lで90psを発生していました。
このエンジンは「ランドローバー 90/110」「ディフェンダー」と名前が変わっていく中、排気量と出力を引き上げながら進化を続け、98年の50周年記念車でいったんディフェンダーのラインナップから消滅します。
クラシック ディフェンダーそのものも2016年1月に生産を終了していましたが、2018年に70周年を記念する「ディフェンダー ワークスV8」として復活を果たしました。搭載されていたのは、5L V8自然吸気エンジン。405ps/515Nmを発生し、0→60mph加速は5.6秒、最高速度は106mph(170km/h)と公表されています。
ワークス8は、厳選された150台のクラシック ディフェンダーをドナーとして、エンジンが換装されたレストア/リビルト(「リプロダクションモデル」とも言います)でした。強力な心臓だけでなく、スポーツモード付のZF製8速オートマチックトランスミッションに加えスプリング、ダンパー、アンチロールバーさらにブレーキまでアップグレードされていました。
フルウインザーレザーのインテリアトリム、ランドローバー クラシック独自のインフォテインメントシステムなど、ただのレストアは全く違うレベルで、文字どおりクラシック ディフェンダーを生まれ変わらせたのでした。