世界進出を決定づけた日本最速の称号
これまで国内カテゴリーでキャリアを築いてきた宮田は、一歩一歩着実にステップアップを果たしてきたドライバーだ。FIA F4、スーパーフォーミュラ・ライツ(全日本F3選手権)でチャンピオンを獲得。2020年からは国内最高峰のカテゴリーである全日本スーパーフォーミュラ選手権とSUPER GT GT500クラスに参戦を果たしている。
そんな宮田がずっと目標にしているのが世界進出だ。F1やWECなどの世界選手権に参戦する夢を持っていた宮田は、その思いを口に出し続けた。そして、そのためには結果が必要なことも理解していた。
2023年も名門トムスから主要カテゴリーに参戦した宮田。メーカーの威信をかけた戦いであるため、SUPER GTでの成功も重要だが、同カテゴリーは1チーム2名体制のほか、サクセスウエイトやさまざまなタイヤメーカーの参入など純粋なドライバーの速さを示しづらいカテゴリーでもある。
一方、スーパーフォーミュラはマシンやタイヤは全車共通で、勝敗はドライバーの腕とチーム力が左右する。ドライバーとしての評価を示すにはこの日本のトップフォーミュラで結果を残さなければいけない。やはり「国内最速」の称号を得るにはスーパーフォーミュラを制する他ないのだ。
今年のスーパーフォーミュラは2022年までFIA F2で走っていたリアム・ローソンがチャンピオンチームである無限から参戦。開幕戦でいきなりデビューウィンを飾るなど印象的な速さを見せた。
そんな中、宮田は開幕戦5位、第2戦4位と着実にポイントを持ち帰っていた。そして迎えた第3戦は予選で失敗し後方からのスタートとなるも、力強い走りを見せた宮田はスーパーフォーミュラ初優勝を達成。念願のトップチェッカーを受けた。
以降も第5戦の優勝を含め、表彰台に登り続けた宮田はランキングトップのまま最終戦を迎えた。初タイトルがかかる重要な1戦だったが、ここでも3位で走り切り念願のチャンピオンを獲得した。
強靭なメンタルを備えた猛者たちが鎬を削る
宮田、ローソン、野尻智紀の三つ巴となった今シーズンのチャンピオン争い。勝敗を左右したのは年間を通しての安定感だろう。ディフェンディングチャンピオンの野尻は肺気胸を患い1戦欠場する不運があったが、宮田と同じく2勝をマーク。しかし、病欠以外にも第3戦での不必要な接触からのクラッシュや第6戦富士での8位など浮き沈みの多い1年となった。
ローソンはルーキーながら最多となる3勝をマークするも、第7戦もてぎでミスを犯したことでノーポイントに終わっており、最終的に宮田に8ポイント足りなかった。一方、宮田は2勝をマークし、今季ワーストが5位というハイアベレージでシーズンを終えている。元々、速さに定評のある宮田だったが、今年は決勝での強さが光ることが多かった。
世界では技術はもちろんのこと、強靭なメンタルを備えた猛者たちが鎬を削っている。
コース上では一歩も譲らないといった気迫、走りは本場ヨーロッパでは必要なことであり、ただ速いだけでは生き残ることができない厳しい世界。TGR WECチャレンジプログラムに選出された宮田は、海外レースに帯同する機会が増えたことでそういった部分も直接感じていたのではないだろうか。
スーパーフォーミュラを制した宮田は、勢いそのままにSUPER GTでもチャンピオンを獲得。24歳での国内主要カテゴリー2冠達成は最年少記録となった。
この宮田の活躍が、来季に向けて物事を加速させていくことになる。