2010年8月、ルノー カングーのショートホイールベース版「カングー ビボップ」が日本に上陸した。大きく開閉するテールゲート&リアグラスルーフなど思わず笑っちゃうようなデザインとビックリ機能を満載。カングーとはまた違った、毎日が楽しくなるようなクルマだった。カングー ビボップとはどんなクルマだったのか。Motor Magazine誌は日本上陸間もなく、試乗テストを行っている。今回はこの時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年10月号より)

ホイールベースを短縮しただけでなく、遊び心を凝縮

「完全専用デザインのフルカーゴネット」として登場した初代カングーは、累計で250万台を販売する大ヒットを記録。日本でも毎年2000台を超える販売を続け、ルノージャポンの屋台骨を支える人気モデルとなった。

2009年9月に日本デビューとなった2代目カングーの販売も好調だという。デビュー当初は、ボディサイズの拡大やシャシがメガーヌベースに変更となったことで、「初代カングーが持っていたフルカーゴネットらしさ、カングーらしさが損なわれたのでは」と心配されたが、デザインだけでなく走りのテイストも巧く継承されていて、初代カングーと変わらぬ高い人気を維持しており、輸入が追いつかない状況が続いているという。シャシの変更は、むしろ吉と出たようだ。

ただそれでも「サイズが少し大きすぎる」という声が一部にはあるようで、2007年の東京モーターショーでコンセプトモデルが発表されたカングーのショートホイールベース版は、早くから話題となっていた。

そのショートホイールベースバージョンがカングー ビボップだ。ただし、ホイールベースを短縮しただけでなく、遊び心にあふれたデザインや機能のエッセンスを凝縮し、そこにオープンエアの開放感という魅力的な要素も加えているのが特徴だ。

面白いのはそのボディサイズとデザイン。全幅1830×全高1840mmというスクエアな背高サイズ、ウエストラインが低くガラスエリアの広い独特のフォルム、アーモンド型の可愛いヘッドライト、盛り上がったフェンダー、カングーに比べて345mmも短くなった全長は、いかにも個性的だ。

全長が短くなっているので、広大な荷室やリアスライディングドアはなく、バックドアは両開きの観音式ドアではなく片開きのスイングドアとなる。

画像: カングーのショートホイールベース版として登場した「カングー ビボップ」。ただホイールベースを短くしただけではなく、リアグラスルーフを前方に跳ね上げてボディ後部をピックアップのようにオープンにすることができるのが特徴。

カングーのショートホイールベース版として登場した「カングー ビボップ」。ただホイールベースを短くしただけではなく、リアグラスルーフを前方に跳ね上げてボディ後部をピックアップのようにオープンにすることができるのが特徴。

開放感たっぷりの室内。直進安定性、乗り心地は上々

カングー ビボップの真骨頂はここからだ。左右独立式のリアシートはフロントシートよりも92mm高い位置に据えられているので見晴らしがよく、前後スライドするだけでなく折り畳みも可能。使わない時は取り外すこともできるので、用途に応じて荷室を自由にアレンジすることができる。荷室容量はリアシート装着時で174L、リアシートを取り外すと1462Lまで拡大する。

さらに、リアグラスルーフを前方に跳ね上げてボディ後部をピックアップのようにオープンにすることができる。しかもテールゲートグラスもセンターコンソール上のボタンでワンタッチで開閉できる。あえてバックドアを片開きのスイングドアとしたのは、ここに理由があったわけだ。もちろん、リアグラスルーフとテールゲートグラスを全開にして走行することもできる。

ルーフのガラスエリアはこれだけではなく、前席上部には左右2枚の手動ポップアップ式グラス、センターには固定式ガラスも備わるので、ルーフはほぼ全面がガラスといった状態だ。なお、これらのグラスルーフには紫外線を95%以上、赤外線を85%以上カットするガラスが使われている。

すべての乗員が空間と光を楽しむというアイデアはユニーク。人生を楽しむためのフランス流の考え方なのだろう。フリードスパイクなどに見られる日本流のスペースユーティリティの考え方との違いは興味深い。

パワートレーンはカングー譲りのもの。搭載エンジンは最高出力105ps、最大トルク148Nmを発揮する1.6L直4。ことさらパワフルではないが、車両重量がカングーよりも50㎏軽く、また5速MTを採用することもあって、それほどもどかしく感じることはない。(4速ATの設定はない)おっとりした乗り味は、ややアップライト気味で座り心地抜群のシートともよく合っている。

「おっとり」といっても、その走りが面白くないというわけではなく、直進安定性は非常に高く、路面凹凸のいなしも巧みで、乗り心地は上々。100km/h走行時、5速で3200rpmとややローギアということもあって、あまりスピードを上げる気にはならないが、一度巡航速度に乗せてしまえば快適そのもの。背高ボディということもあり、ワインディングには向かないと思っていたが、意外に低い重心やショートホイールベースもあって、リズミカルにコーナーをクリアしていったことも付け加えておこう。

カングー ビボップは、新しくなったカングーでは少し大き過ぎるというユーザーのために導入されたもので、「カングーほどは売れないでしょう」とルノー・ジャポンでは予想しているようだが、意外やカングーに迫る人気モデルになりそうな予感もある。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘/写真:永元秀和)

画像: 全高1.84m/全幅1.83mなのに、全長3.87m、ホイールベース2.31mという不思議な形。フルカーゴネットとは、もともとピックアップトラック後方の荷室デッキを屋根付きの貨物車としたもの。

全高1.84m/全幅1.83mなのに、全長3.87m、ホイールベース2.31mという不思議な形。フルカーゴネットとは、もともとピックアップトラック後方の荷室デッキを屋根付きの貨物車としたもの。

ルノー カングー ビボップ 主要諸元

●全長×全幅×全高:3870×1830×1840mm 
●ホイールベース:2310mm
●荷室容量:174〜1462L
●車両重量:1370kg 
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:78kW(105ps)/5750rpm
●最大トルク:148Nm(15.1kgm)/3750rpm 
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:234万8000円(2010年当時)

This article is a sponsored article by
''.