スムーズで繊細な動きを可能にしたもの
アーカックスの動力エネルギーはすべて電気だ。腰にあたる部分にEVバス用に開発された4.5kWh容量の東芝製リチウムイオンバッテリー「SCiB」が挿入されて、26の可動部はすべてモーターで駆動する。そのほかにもタイヤやサスペンションなどクルマと同様の部品も見られるが、ベースとなっているのは産業用ロボットの技術なのだという。
重量物を持ち上げて運搬する建設機械やフォークリフトのように油圧シリンダーで動かすのではなく、アーカックスはあくまで「正確で、繊細で、滑らかな」ロボットらしい動きを実現するためにサーボモーターを採用。手の指に至っては5本それぞれに配置することで独立制御、3つの関節を動かすこともできる。
直線的でゴツい外見だけで判断するならタブレット端末なんて簡単に握りつぶしそうだが、握力はあくまでモデルガンや剣など20kg以下の装飾物を持つ程度の能力に抑えられており、出力調整によってペットボトルを潰さずに握る、そうした細やかな作業の方が得意だという。
実際にデモンストレーションを見ているとカクカクとした動作は一切なく、スムーズに動き、ピタリと静かに止まってまた動き出す、まるで自動車工場で見た組み立てロボットのようだ。
アーカックスには産業用ロボットの技術だけでなく、3.5トンの重量を支えるため建設機械のフレーム構造やフォークリフト用のタイヤなど多分野の部品・技術を応用しているが、実はこうしたノウハウは「GUNDAM GLOBAL CHALLENGE」での開発で培われたもの。
精密減速機はナブテスコ、旋回輪はアンテックス、サーボモーターは安川電機、電動シリンダーは椿本チエイン、外装はガイナ造形などサプライヤーは動くガンダムと同じなのだ。
石井氏は、建設機械メーカーやGUNDAM GLOBAL CHALLENGE、アーカックスの開発で培われてきた、こうした技術的基盤を次世代のエンジニアにつなげていきたいと話す。
「いま世間で注目を集めているジャンルはAIをはじめとするシステム・ソフトウェア開発ですが、日本にはもともとメカニカルなハードウェアのモノづくりで強みがあります。まずは、いまの子どもたちがハードウェアに興味を持つきっかけを作るためにも、“GUNDAM FACTORY YOKOHAMA”で行っているようなエデュケーショナルサポート、小学生や中学生のための社会科見学をツバメインダストリでもやりたいですね」