2024年1月30日、トヨタ自動車株式会社代表取締役会長(以下、会長)の豊田 章男氏が、創業の原点を振り返り、トヨタグループが進むべき方向を示すビジョン「次の道を発明しよう」を発表しました。相次ぐグループの不正問題につき陳謝する一方で、新たなリーダーシップへの取り組みについても、明らかになりました。

失敗を回避するのではなく乗り越える「異常管理」

このタイミングでのグループビジョンの表明は、豊田会長自身の危機感に基づいているようです。グループ各社が成功体験を重ねていく中で、大切にすべき価値観や物事の優先順位を見失いかけている、という危惧があるといいます。

画像: 「やっちゃいけないことをやったグループの責任者として、お詫びするとともに、責任者として動いていくので、叱咤激励をお待ちしております」というコメントで説明会は締めくくられた。

「やっちゃいけないことをやったグループの責任者として、お詫びするとともに、責任者として動いていくので、叱咤激励をお待ちしております」というコメントで説明会は締めくくられた。

発表、質問に対するコメントを見ていくと、今回のビジョンと心構えの共有は、今後も失敗を恐れずにさまざまな領域にチャレンジし続けるための「基盤づくり」である、という印象を受けました。

「変革」がある以上、なにがしかの問題は常に起こりうる。と豊田会長は断言します。大切なのは、その問題にともなう「やってはいけないこと」を明確にすること、そしてそれが限度を超えた時に糺していくこと。

もともとトヨタ生産方式には「異常管理」という考え方があります。「異常」を察知し、修正する、そのサイクルを回していくことこそが、よりよい企業に近づいていく・・・掲げられたビジョンには、異常を異常として判断するための「正常」を定義する意味合いもあるようです。

席上において今後のグループ、企業としての具体的な取り組みについては、多くは明らかにされませんでした。ただ「リーダーとして」豊田会長は、自らが抱くトヨタの原点を伝えていくためのアクションをすでに起こしていることを明らかにしました。

たとえば、全17社が開催するすべての株主総会に、株主の目線から出席する、とのこと。さらに「マスタードライバー」という商品開発の最前線に立つ資格を持つものとして、同じ目線で会話ができるメンバーの選抜を、各グループ会社に指示したそうです。

豊田会長にとって「マスタードライバー」とは商品コンセプトを越えた、クルマの役割、使命を感知できるセンサーの持ち主。企業内での肩書ではなく、もっと根本的なモノづくりの現場で共感し、会話が成り立つ人材を求めていくそうです。

もしかするとイメージ的には、会長と開発スタッフという堅苦しい関係ではなく、「モリゾウと素敵な仲間たち」といった感じなのかもしれません。

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