レースに勝つために生まれてきたモデル
全長4mを切るこのクラスで、これほど高いパフォーマンスを持つクルマは他に心当たりがない。
もともとはラリーで勝つために開発されたホモロゲーションモデルであり、開発には社外の多くのプロドライバーがかかわっている。今回の「進化型」にはこれまでにも増して彼らの声が大いに反映されている。また、実戦の場でも「壊しては直す」が繰り返されてきた。戦闘力の向上はもちろん、より日常で快適に使えるための進化も果たしている。
その内容は内外装の変更、エンジンほか走行性能の向上、AT搭載モデルの追加などが挙げられる。
エクステリアはフロントについてはバンパーの形状や素材を変更するとともに、下端部を3分割構造として修復作業を容易にするなどの見直しがされた。
リアまわりではランプ類が集約されるとともに、テールランプが左右一体につながったデザインとなった。またトヨタのエンブレムも省略された。これらの違いによりひと目見れば新旧がすぐわかる。
車内は、より大きく変わった。センターディスプレイがドライバー側に15度傾けられたほか、運転しながら操作しやすいようスイッチ類の配置が大幅に見直された。さらに、ヒップポイントを25mm下げ、ハンドル位置を調整したことで、より適切なポジションが取れるようになったほか、ルームミラーを上部に移設したり、センタークラスターの上端を50mm下げたことで視界が改善されている。
新設のAT車はこだわりがハンパない。MT車と同等の位置までシフトレバーを高くしたほか、手引き式パーキングブレーキも残されている。さらに競技向けのRCではオプションでより前方にレバーを配してハンドルに近づけるとともに角度を立たせて引きやすくしたガチな仕様が選べるようにされたことにも驚く。
GRカローラと同スペックに。速さが違うのも当然だ
サーキットで新旧を乗り比べると、違いは小さくなかった。GRカローラと同じスペックの強力なエンジンがより軽量なGRヤリスに積まれたのだから、その速さは乗ればすぐに実感できる。
横置きFFベースの4WDながら後輪駆動のようなハンドリングも楽しめるのはGRヤリスならでは。電子制御クラッチで前後の駆動力配分を制御し、ノーマルモードでは60:40、スポーツモードでは30:70、トラックモードでは50:50を基準に可変制御する仕組みとされており、ユーザーの好みに合った走行特性を選ぶことがきる。
従来はややピーキーな面も見受けられたところ、シャシとボディが強化された進化型は、同じタイヤを履くとは思えないほど路面をしっかりしなやかに捉えて、唐突な動き方をしなくなっている。
軽量でホイールベースが短いからなおのこと、この進化はありがたい。より意のままに不安なくコーナーを攻めることができる。