日本仕様の400V急速充電でも優れた効率が期待できそう
新型マカンのアンダーボディに搭載されたリチウムイオン電池の総容量は100kWh、新開発の800Vアーキテクチャーで構成されるプレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)の主要コンポーネンツとして、優れた充電効率を実現しています。
800VアーキテクチャーのBEVとしては先輩格に当たるタイカンは、400Vの充電スポットでも150kWまで安定して充電することができる「HV(High Voltage)ブースター」を採用しています。一方、新型マカンは充電要件に合わせて、実際の充電が始まる前にバッテリー内の高電圧スイッチが自動的に切り替わる「バンクチャージ」システムを、ポルシェとして初めて採用しました。
このシステムでは充電環境に合わせて、搭載される800Vのバッテリーをふたつのバッテリーセットとして実質的に分割し、1機の400V充電ステーションでの並列充電を可能にしています。定格電圧400V×2セットに分けることで、HVブースターなしでも、最大135kWまでの効率的な充電を実現しているそうです。
400Vに対応している日本のCHAdeMOによる充電でも、しっかりそうしたグレードアップの恩恵を受けることができそうです。
結果、新型マカンは、すべてのグレードで非常に優れた航続距離を実現しました。マカン4で最大613km、マカンターボで最大591kmに達します。もちろんそれは、スポーツモデルに求められるパフォーマンスとのトレードオフで成り立っているわけではありません。
なにしろ出力的には大人しめなマカン4ですら最高出力は300kW(408ps)、最大トルクは650Nm。マカンターボにいたっては470kW(639ps)、1130Nmを発生しています。公表された0→100km/h加速がそれぞれ5.1秒と3.3秒、最高速度は220km/hと260km/h。内燃機関を搭載した現行モデルと比べるとマカンターボは、加速性能ではマカンGTSを、最高速度はマカンSを凌いでいます。
「瞬間移動」が実は本命?ライフスタイルも革新??
そういえば「FAST TRAVEL」にはもうひとつ、ゲームファンにはおなじみの「瞬間移動」という意味もあるようです。ゲーム世界を効率的に楽しむために、目的地への移動をテレポーテーションのような手法で素早く行うことができるスキルです。
クルマで言えば、まるで瞬間移動するかのごとく、敏捷に動き回る様子がイメージされます。どちらかといえばポルシェの場合、こちらの「FAST TRAVEL」の方が、由来としては本命のような気もします。
システム出力が952ps(ローンチコントロール作動時)に達するタイカン ターボSは、0→100km/h加速をわずか2.4秒でこなすとのこと。現行型でも十分にその加速は「ワープ感」たっぷりでしたが、新型はさらに異次元へと突入しているのは間違いなさそうです。もちろん新型マカンも、SUVとは思えない「瞬間移動」の醍醐味を、味わわせてくれることでしょう。
「私たちの目標は、このセグメントで最もスポーティなモデルとして、完全電動のマカンを提供することです」と、マカン製品ライン担当バイスプレジデントのイェルク・ケルナーは述べています。
ポルシェは伝統的に、単なる高性能モデルではなく、日常の使いやすさや快適性にも配慮した性能向上にこだわり続けてきました。そういう意味ではこれまでもポルシェにとって「FAST TRAVEL」は、本質的なDNAとして受け継がれているものなのかもしれません。
そしてこれからは、タイカンから始まったポルシェの電動モビリティをめぐる「FAST TRAVEL」戦略が、マカンをはじめさまざまな形で具現化されていくことになります。そこに、どれほど革新的な「カーライフ」の未来が広がっていくのか・・・まずは2030年までの数年間に、注目したいと思います。