初のフル電動SUV「マカン」が本国でお披露目。初のフル電動サルーン「タイカン」が、初めての大幅改良を実施するなど、2030年までに新車販売フル電動化率80%以上を目指すポルシェの「初物尽くし」な取り組みが、続いています。より高く、より速く、より遠くへを目指してBEVの可能性を拡げるその「ファストトラベル」戦略の一端を、ひも解いてみました。

高出力な急速充電を繰り返しても効率が低下しない?

北米における「real-world range(実際の使用条件下での航続距離)」の確認は、約120km/hでの巡航も含まれます。これは日本でも、公道で新旧タイカンを比較したなら、歴然とした差がつくことになるのかもしれません。

画像: 新型タイカンのテストチームは、州間高速道路で許可されている時速75マイルの最高速度で運転した。これは約120km/hに相当するという。

新型タイカンのテストチームは、州間高速道路で許可されている時速75マイルの最高速度で運転した。これは約120km/hに相当するという。

もうひとつ注目したいのは、走行テストでの充電テストに関する報告です。

「The new Taycan impresses with a real-world range of up to 587 kilometres」より(2024年2月2日配信)

タイカンは300kW以上の充電電力を何分間も発揮し、20分足らずで10%から80%の充電状態まで数回充電することができました。このテストでは、充電性能、充電時間、充電開始までの時間も大幅に改善されました。

テストの詳細は明らかにされていませんが、一般的に大容量のバッテリーは十分な充電に時間がかかると言われています。加えて、高出力の急速充電を続けると熱ダレ状態が発生、2回、3回と繰り返しているうちに充電効率が驚くほど低下してしまう場合もあるそうです。

しかし北米のテストで新型タイカンは、300kW以上という日本では望むべくもない高出力な急速充電を繰り返してもへこたれることがなかった様子。さまざまな意味で、充電効率が大幅にアップグレードされていることが窺えます。

日本向けの仕様に関しては、具体的な充電時間の向上率など、細部は今のところ明らかになっていません。パフォーマンスバッテリープラス(日本ではタイカン 4Sに標準搭載)の総容量は、従来の93kWhから105kWhに増加するとともに、充電性能自体は従来から50kW増の320kW(800V)まで対応できるとされています。

ちなみに全国のポルシェディーラーや東京、名古屋、大阪のランドマーク施設と連携して、独自に展開する急速充電インフラ「ポルシェ ターボチャージングステーション」は、国内法規最速の150kW(400V)での充電を、可能にしています。

これまでは、それを利用すると気温や車両の状態が理想的なら、従来型では30分弱の充電時間で80%(走行距離にしておよそ300km分)まで回復できるとされていました。

新型タイカンのバッテリー容量拡大と充電効率の向上によって、日本でロングドライブを楽しむ時に「充電」というストレスがどのくらい軽減されているのか、気になるところではあります。

新型マカンは多彩な空力デバイスでレンジを拡大

直接的に「ファストトラベル」を謳ってはいませんが、新型マカンの新デザインが実現したエアロダイナミクスの進化もまた、ポルシェBEVの「旅する高性能」向上に大きく貢献しているようです。

画像: WLTPモード総合では最長613kmのレンジとなる新型マカンだが、市街地でのモードに限ると最長784kmまで伸びる。写真のハイパフォーマンス版マカン ターボでも最長765kmを実現。日常での使い勝手は、非常に優れていそうだ。

WLTPモード総合では最長613kmのレンジとなる新型マカンだが、市街地でのモードに限ると最長784kmまで伸びる。写真のハイパフォーマンス版マカン ターボでも最長765kmを実現。日常での使い勝手は、非常に優れていそうだ。

Cd値 0.25(現行型は0.35)というSUVとしては驚異的な空力性能を達成しているのは、アクティブとパッシブ、ふたつのエアロダイナミクスによって磨かれたデザインDNAです。大成功を収めたマカンとしてのアイデンティティを継承しながら、消費電力の高効率化とゆとりの航続距離を確保するために、十二分な空力要件の実現を追求しました。

積極的な空力性能向上につながるポルシェ・アクティブエアロダイナミクス(PAA)システムには、アダプティブリアスポイラー、フロントエアインテークのアクティブクーリングフラップ、完全に密閉されたアンダーボディのフレキシブルカバーが含まれています。

画像: ホイールベースは、先代から86mm拡大され3m近い。取り回しが気になるところだが、マカンとしては初めてリアアクスルステアリングがオプションで設定されている。最大操舵角は5度で、コンパクトな旋回半径と優れた高速安定性を両立しているという。

ホイールベースは、先代から86mm拡大され3m近い。取り回しが気になるところだが、マカンとしては初めてリアアクスルステアリングがオプションで設定されている。最大操舵角は5度で、コンパクトな旋回半径と優れた高速安定性を両立しているという。

フロントエアインテーク内のアクティブクーリングフラップ、ヘッドライトモジュール下のエアカーテンやリアのルーバーディフューザーもまた、攻め系の空力アイテムと言っていいでしょう。

さらに新型マカンでは、低めのフロントエンドや、横方向のティアオフエッジなど、シルエット的にも優れた空力性能を実現しています。タイヤの輪郭まで空力的に最適化されているうえに、開口部の小さなホイールを装備。空気抵抗を徹底的に低減することで、少しでも長く、遠くへ行く・・・を目指しています。

「田舎道を普通にクルージングしているとき」と、前置きしたうえで、ポルシェは「マカンは自動的に理想的な流線型になります。リアスポイラーがエコポジションに移動し、エアフラップが閉じ、シャシーレベルが下がります」と解説します。Cd値0.25は、この時、達成されているそうです。

This article is a sponsored article by
''.