同じタイヤとは思えないほどにしなやかなグリップ感
サーキットで新旧を乗り比べると、違いは小さくなかった。GRカローラと同じスペックの強力なエンジンがより軽量なGRヤリスに積まれたのだから、その速さは乗ればすぐに実感できる。
横置きFFベースの4WDながら後輪駆動のようなハンドリングも楽しめるのはGRヤリスならでは。
電子制御クラッチで前後の駆動力配分を制御し、ノーマルモードでは60:40、スポーツモードでは30:70、トラックモードでは50:50を基準に可変制御する仕組みとされており、ユーザーの好みに合った走行特性を選ぶことがきる。
従来はややピーキーな面も見受けられたところ、シャシとボディが強化された進化型は、同じタイヤを履くとは思えないほど路面をしっかりしなやかに捉えて、唐突な動き方をしなくなっている。
軽量でホイールベースが短いからなおのこと、この進化はありがたい。より意のままに不安なくコーナーを攻めることができる。
ATの走りは、MTに遜色ないほどダイレクト感があり、サーキットを攻めても不満を感じないことに感心した。「GR−DAT」と呼ぶATはセンサー類の拡充も効いて、あたかもドライバーの意思を読み取るかのようにシフトを制御してくれることにも驚いた。
8速のクロスレシオゆえ各変速比が接近しているため、エンジンの美味しいところを引き出しやすい。もちろんシフトチェンジのロスも小さい。
2ペダルがないことを理由に家族から購入を反対されていた人も、これなら家族の同意はもちろん、本人もドライバビリティを含め十分に満足できるに違いない。
GPSの位置判定により利用可能エリアでアンチラグ制御となり、スピードリミッター上限速度が引き上げられる「サーキットモード」が新たに設定された。
ダートコースでは走破性の高さとともに、アクセルペダルを踏めばグイグイッと曲がっていける進化した「GR−FOUR」の巧みな制御を体感することもできた。
トヨタがいかに力を入れてこのGRヤリスを進化させたかがヒシヒシと伝わってくる仕上がりであった。(文:岡本幸一郎/写真:井上雅行)