GT-Rを生み出した「スカイライン神話」の礎
昭和41(1966)年8月、日産自動車はプリンス自動車工業と合併(実質的には日産自動車による吸収合併だった)。そして昭和43(1968)年9月にはスカイライン2000GT(GC10)のフルモデルチェンジを発表した。この時を機にスカイラインは、プリンス自動車の小型スポーツセダンから完全に脱却し、本格的な日産のスポーツセダンとなったとも言える。
レースでの活躍を前提にしたフラグシップ的存在としてスカイライン2000GT-R(PGC10)が翌44年に登場するが、一般的に「スカG」と呼ばれるのがスカイライン2000GTで、これが以後のスカイライン人気を決定づけた。
位置づけとしては、先代のスカイラインGT-BがスカイラインGT-Rに相当し、GTはその一般訴求モデルであるGT-Aにあたると言えるだろう。
スタイルはさすがに古めかしさを隠せなくなっていた旧型モデル(S54)を刷新し、「ハコスカ」として一世を風靡する普遍的なカッコ良さを体現していた。具体的には、旧型に比べ、全長でプラス195mm、全幅でプラス100mm、全高でマイナス20mmとロング&ワイドそしてローとなり、精悍さを一気に増したことで若者の心をがっちりと掴んだ。
エンジンはL20型2L直6・SOHC。当時セドリックに搭載されていたL20型シングルキャブレター付きエンジンをベースに、圧縮比を8.5から9.0に高めるとともに、細部を改善して高速型の特性としている。
6気筒エンジンが持つ等間隔燃焼のバランスの良さ、静粛性の高さに加え、7ベアリングクランクシャフトを採用したことにより、高い高速耐久性を持った。シリンダーヘッドをアルミ合金として、軽量化するとともに冷却効率も高めている。キャブレターはツーバレルのシングルで、スポーティな味付けとした。
ベースとなったシャシは4気筒エンジンを搭載するスカイラン1500デラックスで、6気筒のL20を搭載するにあたってエンジンコンパートメントを195mm延長、6気筒ユニットを無理矢理押し込んだ。乱暴なようにも思えるが、先代のS54の時もこの手法を用いている。
サスペンションはフロント:ストラット、リア:セミトレーリングアーム式の四輪独立懸架を採用。サスペンションをGT-Rと同じとしたことで、高速安定性、操縦性を確保していた。
ただし、GTの乗り心地はタイヤサイズの設定との相乗効果もあり、ソフトな方向だったようだ。当時のモーターマガジン誌の試乗記では「ロールは大きいが60mm増大したトレッドと大径のスタビライザー、そして4輪独立の接地性の良さが加わって操縦上の不安はなく、ラフロードでもピッチングが最小限で、走行安定性はリジッドアクスルのものとは雲泥の差だ」とある。
ブレーキはフロントにディスクを採用。GTカーに相応しい制動性能を持たせるとともに、タンデムマスターシリンダーとすることで、前後どちらかのブレーキラインから液漏れがあっても、ブレーキ機能が残るように配慮されている。
室内もGTの名を裏切らないものだった。フロントシートはバケットタイプで、見た目だけでなく、比較的薄いパッドで形状を良くしたことからサポート性にも優れ、長時間の運転でも疲労が少ない。
そのフロントシートは前後に約160mmアジャストできるほか、それまではローバックシートが当たり前だったのが、安全対策として標準仕様でリクライニングヘッドレストを備えるハイバックシートになっていた。またリアシートは、旧型にくらべると格段に足元もショルダースペースも広くなっていた。
これは快適に高速長距離走行をこなす「グランドツーリング=GT」という目的に適ったものといえる。
スカイライン2000GTの人気はこの後、昭和47 (1972)年に登場した4代目C110型(ケンメリ)以 降も衰えることなく、むしろさらに増していくことになる。そうした意味では、この3代目 C10型(ハコスカ)は、連綿と続くスカイライン神話の礎となったモデルでもある。
日産スカイラインGT(GC10型)諸元
●全長×全幅×全高:4430×1595×1390mm
●ホイールベース:2640mm
●車両重量:1090kg
●エンジン型式・種類:L20型・直6SOHC
●排気量:1998cc
●最高出力:105ps/5200rpm
●最大トルク:16.0kgm/3600rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:6.45S-14 4PR
●新車価格:86万円