レクサスは2024年4月16日から21日、イタリア・ミラノで開催された世界最大のデザインイベント、「ミラノ・デザインウィーク2024」に参加、インスタレーション「Time」を公開した。3名のデザイナー/アーティストが表現したLEXUSの世界とは?(report=大矢アキオ ロレンツォ Akio Lorenzo OYA)

レクサス的アプローチから見るミラノ・デザインウィーク

レクサスのミラノ出展は今回で15回に達した。レクサスは、デザインウィークというイベントにどのような変化をもたらしたと考えているのだろうか? 質問に対してレクサスの担当者は、書面で以下の回答を寄せた。

画像: 『8分20秒』。photo: LEXUS

『8分20秒』。photo: LEXUS

「私どもの出展が何か変化をもたらしたかは分かりません。しかしレクサスは、初めてミラノ・デザインウィークに参加をした自動車ブランドといわれております。初出展は2005年に遡りますが、以来一貫してデザインを通じ、ブランドの考えをお伝えしたいと取り組んでまいりました。今では家具以外のブランドも多く出展するようになりましたが、その点においては、ブランド表現の場としてフォーリサローネに光を当てて、同じくデザインの力を信じるブランドの皆さんと共にイベントの価値をお示ししたということはあるかもしれません」

今回のインスタレーションには、前述のように日本の伝統素材や高度な技術が盛り込まれていた。ただし日本人以外の来訪者に、レクサスが「日本を発祥とするブランド」であったり「自動車」であることを確実に意識させることが希薄であったとも筆者はとれた。そうした感想に対しては、次のように答えてくれた。

「今回のインスターションでは、主にレクサスが考える次世代モビリティの未来であるソフトウェアによる無限の可能性と、ソフトウェアがもたらす体験価値の変化というブランドの思想を表現しました。また、伝統的な職人技術と最先端のテクノロジーの融合も、ブランドの姿勢を表すものとして、インスタレーションに織り込んでいますが、お客様には感覚的に空間全体からその想いの一端を感じ取って頂ければと考えておりました」

イタリアを含め欧州におけるレクサスの知名度は、米国と比較すると、いまだ浸透途上である。デザインウィークで欧州系ブランドは市販車を展示したり、女性など未開拓の顧客層を意識した企画を展開する例が少なくない。レクサスは、即座に販売に直結するユーザーを意図したものなのか? それとも今はレクサスが購入できない未来のユーザーに訴求するものなのか知りたい。

 それに対しては「先に述べました通り、私共にとってミラノデザインウィークは、皆さまにブランドを体感頂く場であると考えております。現在・未来含め、一人でも多くのお客様にレクサスに関心をお持ち頂き、心の片隅にレクサスを気に留めて頂ければ、これ以上の喜びはございません」との答えが寄せられた。

これらの回答から感じられるのは、レクサスが欧州という市場の特性を心得ているということだ。旺盛な購買欲と進取の気性に溢れた北米と異なり、この地ではブランドの浸透には時間をかけたものが成功する。好例がアウディだ。今日でこそイタリアの2023年ブランド別新車登録台数で9位にランクインし、ドイツ系ではVWに次ぐ。

Cセグメントに絞っていえば、A3が他のあらゆるブランドを抑えて首位に君臨している。だがアウディのイタリア輸入開始は1966年にさかのぼり、控えめながらも地味なクルマだった時代からひたすら良質なイメージを構築してきた現地法人の努力が背景にある。今回のテーマは奇しくもTimeだが、レクサスの地道な取り組みは、欧州の時間感覚に近いともいえる。

もうひとつ特筆すべきは『BEYOND THE HORIZON』を手掛けた吉本英樹氏(Tangent)は、11年前の2013年にレクサスが主催した第1回デザインアワードのグランプリ受賞者だということである。かつてブランドが見出した人材が新たな創造を実現したかたちだ。欧州では文化を育てる企業が評価される。そうした意味でもレクサスのデザインウィークにおける“振る舞い”は、今後の展開次第で良い結果を示せるだろう。

画像: 吉本英樹氏(Tangent)による2013年第1回レクサス・デザインアワードのグランプリ受賞作・照明『INAHO』。管の穴からは稲穂を想像させる光が投影される。また基部のセンサーにより、人が通ると茎が揺れる。photo: Akio Lorenzo OYA

吉本英樹氏(Tangent)による2013年第1回レクサス・デザインアワードのグランプリ受賞作・照明『INAHO』。管の穴からは稲穂を想像させる光が投影される。また基部のセンサーにより、人が通ると茎が揺れる。photo: Akio Lorenzo OYA

画像: 『BEYOND THE HORIZON』とレクサスLF-ZC。photo : Akio Lorenzo OYA

『BEYOND THE HORIZON』とレクサスLF-ZC。photo : Akio Lorenzo OYA

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