軽いのに重い不思議。軽くないけど重くない悦び
けれど同時に、その軽量化がそのパフォーマンスを楽しむためのハードルを、少し上げてしまっていたようです。さいたる原因のひとつが渡辺氏も指摘している、「カーボンホイールの(重量ではなく)存在感が重いからなのだと思う」ということでしょう。

こちらはA110 Rのカーボンホイール。キズ、破損したときのコストを考えると、確かに「ちょっとそこまでドライブに」行く気分にはなれないかも。

チュリニが履くのは、18インチアロイホイール GT RACE(ブラック)。前輪ブレーキクーリングダクトを備える。タイヤはRと同じミシュラン パイロットスポーツ カップ2だ。
今回、特集の中で紹介しているA110R チュリニ(以下 チュリニ)はそういう意味でほどよく「軽くないけど重くない」仕様に変更されています。ホイールは、オプション設定のアルミホイールの中では、もっとも軽量な「GTレース」に履き替えています。
「ガンガン使えるアルミホイールの方がむしろお誂えなのだろう。チュリニという公道寄せな名前はそんな気軽さも表しているのかとみてとれる」(渡辺氏)ということで、より日常的に「ガチに走りこみたい」層にぴったりの仕様となっているようです。

A110 Rチュリニの車両重量は1100kg。もちろん「R」と比べればおよそ10kg重いけれど、その軽さは変わらず驚異的なレベルにある。
もっとも、やっぱり気になるのはA110Sの標準装着ホイール比で12.5kg軽い=バネ下重量軽減に貢献しているというカーボンホイールから、いかに軽いとはいえバネ下が重くなるアルミホイールに変更したことによる弊害でしょう。すっきりクリアな「R」の乗り味がスポイルされてしまっているのではないか、という不安はごもっとも。
本編ではそのあたりを渡辺氏が、しっかりねっとりじっくり検証してくれています。価格差1000万円オーバーのマツダ ロードスターRF VSの脅威的なコストパフォーマンスの高さも含めて、現代のライトウェイトスポーツカーが行きついた「日常と非日常のちょうどいい匙加減」を、味わってみてください。

アルピーヌA110 R チュリニの価格は1550万円。マツダ ロードスター RF VSの価格はそのほぼ3分の1となる423万7200円。軽いことから生まれる魅力は、その価格差に左右されるものではない。