エッジ際立つ個性派たちの走りも、しっかり「洗練」
非常にわかりやすいウエット性能の進化と同様に、ドライ路面でまっさきに感じられたのは優れた快適性と静粛性でした。
一般道(と言っても、富士スピードウェイ内の外周路ですが)で試乗したCクラスは乗り心地の良さにまずは感心。やや荒れ気味の路面でも「雑味」は控えめな印象です。
静粛性に関しても期待以上。室内に侵入してくるノイズは、タイヤ/ロードともに巧みに抑えられている印象があります。総じてNVHに関するストレスの低減効果は非常に大きく、上級サルーンとしての走りのグレードアップにはおあつらえ向きでしょう。
ただしコンフォート面での上級移行と相まって、スポーティ感は、ややマイルドに躾けられているように思えました。アシンメトリック6では、タイヤに加わる負荷の変化に応じて、接地形状を変化させる「ドライコンタクトプラステクノロジー」が採用されています。その効果でしょうか。
もっともけっして動きや反応が「ダルになった」わけではなく、「エッジ感」がややソフトに丸められている感覚で、多くのドライバーには受け入れられやすい進化と言えそうです。
ある意味、より大人好みの味付けはシビックやGR86との相性も良いもの。剛性感が高くしなやかな走りが特徴のシビックでは、全体的なしっかり感が増し、身のこなしもより洗練された印象があります。
GR86も同様に、やや上品な方向にシフトされたフィーリングが味わえました。生来のソリッドさに任せて振り回す走りではなく、ほどよくシャープな前輪のキレとスムーズな後輪の追従性をじっくり味わってみたい、と思わせてくれるものでした。
実は個人的には、もう少しだけ接地感を伝えて欲しいと思える時もありましたが、実にバランスの良いセッティングと言えそうです。あとは、とくに強調されていなかった「ライフ」性能が確保されていれば、文句なし。ナローグルーブがもたらす高い静粛性が摩耗によってどのように変化していくのか、はやはり気になるところです。
ちなみに実はもう1台、ドライのハンドリングコースでアバルト595をちょっとだけ試すことができたのですが・・・想像以上にマッチしていることに驚きました。GR86同様に最適化されたソリッド感に加え、静粛性、快適性の向上が、スモールギャングの乗り味までしっかり洗練させていたのでした。(文:神原 久 Webモーターマガジン編集部/写真:伊藤嘉啓)