軽量&スタイリッシュボディの俊足FFクーペ
日産初の記念すべきFF乗用車となったのが、新世代のシビルカー(大衆車)として企画・開発されたチェリーだ。
まずはカプセルシェイプの2ドアセダンと4ドアセダンが昭和45(1970)年9月に発表され、その1年後にプレーンバンクスタイルの独創的なボディを身にまとったクーペが投入された。
スタイリングは、とにかくユニークのひとこと。フロントビューはセダンと同じデザインだが、リアのオーバーハングを延ばし、個性的なアイラインウインドウとマッハラインで、個性的でスタイリッシュなクーペに仕立て上げた。
エンジンはサニーから移植された4気筒OHVのA10型とA12型で、ともに実績のあるもの。シングルキャブ仕様のA10型は、988ccの排気量で58ps/6000rpmを発生する。1171ccのA12型は2タイプが用意され、シングルキャブ仕様が 68ps/6000rpmの性能だ。そしてホットバージョンのX-1にはSUツインキャブが装着され、こちらは80ps/6400rpm、9.8kgm/4400rpmを発生する。
ちなみにエンジンは横置きで、すべてレギュラーガソリン仕様だった。このクーペX-1をベースにさらにハードに仕上げられたのが、昭和48(1973)年3月に登場したクーペX-1·Rだ。
A12型エンジンに変更はないが、FRP製オーバーフェンダーを装着し、足元も 165/70HR13ラジアルタイヤで決めている。インテリアもスパルタンムードにあふれ、鳩目ボタンのバケットシートや本革巻きステアリングを装備した。
クーペX-1·Rは、星野一義らのドライブにより、サーキットレースでも快進撃を続けた。
日産 チェリー・クーペ 1200X1-R(KPE10ST)諸元
●全長×全幅×全高:3690×1550×1310mm
●ホイールベース:2335mm
●車両重量:645kg
●エンジン型式・種類:A12型・直4OHV
●排気量:1171cc
●最高出力:80ps/6400rpm
●最大トルク:9.8kgm/4400rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:165/70HR13
●新車価格:75万5700円