この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第77回目は、FFスポーツの優位性を世に知らしめた、日産 チェリー・クーペ 1200X1-Rの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

軽量&スタイリッシュボディの俊足FFクーペ

日産初の記念すべきFF乗用車となったのが、新世代のシビルカー(大衆車)として企画・開発されたチェリーだ。

画像: 他に類のない「アイラインウインドウ」のユニークな形状が個性的なリアビューを際立たせる。このスタイリングが当時スタイリッシュで、X1-Rは人気車種に。

他に類のない「アイラインウインドウ」のユニークな形状が個性的なリアビューを際立たせる。このスタイリングが当時スタイリッシュで、X1-Rは人気車種に。

まずはカプセルシェイプの2ドアセダンと4ドアセダンが昭和45(1970)年9月に発表され、その1年後にプレーンバンクスタイルの独創的なボディを身にまとったクーペが投入された。

スタイリングは、とにかくユニークのひとこと。フロントビューはセダンと同じデザインだが、リアのオーバーハングを延ばし、個性的なアイラインウインドウとマッハラインで、個性的でスタイリッシュなクーペに仕立て上げた。

エンジンはサニーから移植された4気筒OHVのA10型とA12型で、ともに実績のあるもの。シングルキャブ仕様のA10型は、988ccの排気量で58ps/6000rpmを発生する。1171ccのA12型は2タイプが用意され、シングルキャブ仕様が 68ps/6000rpmの性能だ。そしてホットバージョンのX-1にはSUツインキャブが装着され、こちらは80ps/6400rpm、9.8kgm/4400rpmを発生する。

ちなみにエンジンは横置きで、すべてレギュラーガソリン仕様だった。このクーペX-1をベースにさらにハードに仕上げられたのが、昭和48(1973)年3月に登場したクーペX-1·Rだ。

A12型エンジンに変更はないが、FRP製オーバーフェンダーを装着し、足元も 165/70HR13ラジアルタイヤで決めている。インテリアもスパルタンムードにあふれ、鳩目ボタンのバケットシートや本革巻きステアリングを装備した。

画像: 搭載された1.2LのA12型直40HVエンジンは、SUツインキャプにより最高出力 80ps、最大トルク9.Bkgmを発生。最高速160kmを誇った。性能は世界的に見てもFFの元祖ミニ・クーパーの性能に匹敵。

搭載された1.2LのA12型直40HVエンジンは、SUツインキャプにより最高出力 80ps、最大トルク9.Bkgmを発生。最高速160kmを誇った。性能は世界的に見てもFFの元祖ミニ・クーパーの性能に匹敵。

クーペX-1·Rは、星野一義らのドライブにより、サーキットレースでも快進撃を続けた。

日産 チェリー・クーペ 1200X1-R(KPE10ST)諸元

●全長×全幅×全高:3690×1550×1310mm
●ホイールベース:2335mm
●車両重量:645kg
●エンジン型式・種類:A12型・直4OHV
●排気量:1171cc
●最高出力:80ps/6400rpm
●最大トルク:9.8kgm/4400rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:165/70HR13
●新車価格:75万5700円

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