V12自然吸気に3基のモーターを搭載したHPEV(ハイパフォーマンスEV)、レヴエルトがついに始動。まずは富士スピードウェイの本コースでウェットだけど全開走行!続いては待望の一般道で乗ってみたら、新境地もシン境地もすべてが見えてきた。(MotorMagazine 2024年9月号より+10月号を再構成)

伝統と最新技術による、新たなる走りの楽しさ

それにしても、そのあまりに自然な反応に「本当に電子デバイスが介入しているの?」と訝しがる向きもあるだろう。たしかに、車両の姿勢が乱れたことを検知してから電子デバイスが介入すれば、制御に遅れが生じ、どこかしらギクシャクとした動きになるものだが、レヴエルトにはそれがまったくといっていいほど見られない。

画像: レヴエルトのモノコックボディには軽量化と剛性アップのため数種類のCFRPが使われている。

レヴエルトのモノコックボディには軽量化と剛性アップのため数種類のCFRPが使われている。

画像: 新エンジンは、優れたパワーウェイトレシオを実現する2台のフロントアキシャルフラックスモーターと、Lamborghini V12モデルに初めて搭載された8速デュアルクラッチトランスミッションの上に配置された1台のラジアルフラックスモーターと連動。

新エンジンは、優れたパワーウェイトレシオを実現する2台のフロントアキシャルフラックスモーターと、Lamborghini V12モデルに初めて搭載された8速デュアルクラッチトランスミッションの上に配置された1台のラジアルフラックスモーターと連動。

その秘密は、ランボルギーニ独自のフィードフォワード技術にある。フィードフォワードとは、一般的なフィードバック制御とは異なり、現象が発生する前に必要な対処を行う制御技術のことを指す。

もちろん、そんな「未来を予言する」ようなことがコンピューターにできるはずもないが、ランボルギーニはハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルへの操作から「ドライバーが何を期待しているか?」を予測。そこでオーバーステアを期待していると判断されれば、前述したデバイスを駆使してオーバーステアになりやすい状態をあらかじめ作り出してくれるのだ。ドライバーが違和感を覚えない最大の理由は、この点にあったといって間違いない。

こうした予測制御技術を、ランボルギーニはウラカンEVOで初投入している。レヴエルトでは、これを大幅に進化させることで、本来は制御が難しいV12ミッドシップマシンでも後輪を自在にスライドさせる究極のドライビングダイナミクスを実現したのである。

さらにいえば、優れた姿勢安定性を生み出す4WD制御技術を長年ランボルギーニが培ってきたからこそ、そこで手に入れたスタビリティをスライドコントロール性に振り分けることができたとも考えられる。

ちなみにランボルギーニの予測制御技術は特許を取得済みのため、他ブランドはマネをすることができないという。

話を試乗インプレッションに戻せば、最終コーナーを立ち上がったレヴエルトは、ストレート上で安全を確認してから全開加速を試みたにもかかわらず、第1コーナーのはるか手前で291km/hに到達。1015psのパワーと優れたエアロダイナミクスの実力を見せつけたのである。おそらく、最終コーナーを普通に立ち上がり、1コーナーへのブレーキングをもう少し我慢すれば、余裕で300km/hをマークしただろう。

続くラップでは、ドライビングモードをラップタイム重視の「コルサ」に切り替えてみた。すると、今度は早めにアクセルペダルを踏み込んでもテールスライドさせる気配も見せず、全力でコーナーを立ち上がる効率の高さを発揮したのである。

プラグインハイブリッドによりCO2排出量を半減させただけでなく、動力性能を大幅に向上させ、ファン・トゥ・ドライブの面でも新たな境地を切り拓いたレヴエルト。ランボルギーニ伝統の自然吸気式V12エンジンと最新テクノロジーを融合した新世代の「猛牛」は、彼らの輝かしい未来を鮮やかに映し出す役割を担って誕生したかのようだ。(ここまで文:大谷達也/写真:永元秀和)

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