元祖ホットハッチがトヨタから登場!
ハードサス装備の「S」はリアルスポーツカー的
昭和53(1978)年に発売されたKP61はスターレットとしてはKP47に続く第2世代目で、これ以降継承されていくことになる2ボックススタイルが確立されたクルマとなった。それまでの「パブリカ」と「パブリカスターレット」の2車種を統合して「スターレット」と独立させたクルマでもある。
開発コンセプトは、もちろん小型大衆車としての機能性を追求することだった。この頃は2ボックスハッチバックが世界的に小型車の主流となっていたのだ。このクルマもこの流れに乗るべく、3/5ドアの2ボックスハッチバック車となったわけだ。
トヨタはこれにスポーティグレードとしてSモデルを設定し、好評を博した。スタイリングは直線と曲線をうまく織り交ぜてスマートに仕上げている。コンパクトで嫌味のないデザインが印象的だ。
インテリアも車格に見合うようなシンプルなものだが、インパネ右側に大径のタコメーターが備わりその気にさせられる。シフトレバーの位置も自然なもので、 ABCペダルも適切な位置にあるのでヒールアンドトウもしやすいものとなっていた。ステアリングホイールは3本スポークのオーソドックスな形状となっている。
搭載されたエンジンは従来型のストロークアップで1.3Lとした直列4気筒OHVの4K-U型だ。動弁機構はすでに旧式と言えたが、信頼性は抜群のものがあった。72ps/5600rpmの最高出力はこのクラスでも特別目を引くものではなかった。
しかし、1300Sの評価を絶対的なものとしたのは、わずか710 kgに抑えられた車重だった。これによりスポーツ性能が担保されたのだ。
もう一つ大きな支持を得た理由がある。このクラスの2ボックスハッチバックの主流がFFだったところにFR方式を採用したことでユーザーには喜ばれたのだ。やはりテールスライドやドリフト走行が可能なこの駆動方式の人気は根強かった。
走りを支えるサスペンションはフルモデルチェンジに伴って、大きくその構成を変化させている。フロントは一般的なマクファーソンストラットだが、リアは従来のリーフリジッド式から、現代的なコイルスプリングを使用した4リンク・リジット式が新たに与えられることになった。
デフとドライブシャフトを一体としたホーシングを上下2本ずつ4本のリンクで前後方向の位置決めをし、ボディとホーシングを斜めにつなげるラテラルロッドで横方向の位置決めをするというこの形式は「足のいいやつ」で売ったカリーナと同様となる。
ステアリングはラック&ピニオン方式だ。現在では当たり前の機構だが、実にトヨタが量産車種の分野でこれを採用するのは、トヨタ2000GTを別格とすれば、このスターレットが最初の試みであった。これがスポーティなイメージをさらに印象付けることになる。ブレーキはフロントにディスクブレーキを採用し、安定した制動性能を確保した。
スターレット1300Sの走りは軽量なボディと素直なハンドリング特性に象徴される。このSグレードに装備されたタイヤは他グレードの12インチに対して13インチ、さらにサスペンションもハードなセッティングとされていたため、ワインディングロードでの走りは純粋なスポーツカーに近いフィーリングにまとめられていた。
コーナーでは比較的低速からリアがブレークし始めるため挙動が穏やかで、カウンターが当てやすかった。これがドライバーの制御達成感につながり、どんな場所でも自在に振り回せる自信となっていく好循環を生み出していたのだ。
このハンドリングの素直さに注目したチューナーも多かった。ナンバー付きの車両で行われたワンメイクレースや、オーバーフェンダーやスポイラーなどを装着した当時のTS(グループ4)仕様によるレース、そしてラリーなど、KP61スターレットはモータースポーツ入門車としても絶大な支持を得たのだった。
このクルマでドライビングをマスターしたとか、モータースポーツに興味を持ってジムカーナやダートトライアル、そしてレースやラリーに参戦したという人は少なくない。
トヨタ スターレット1300 3ドアS(KP61型)諸元
●全長×全幅×全高:3725×1525×1370mm
●ホイールベース:2300mm
●車両重量:710kg
●エンジン型式・種類:4K-U・直4OHV
●排気量:1290cc
●最高出力:72ps/5600rpm
●最大トルク:10.5kgm/3600rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:145SR-13
●新車価格:82万1000円