レーシングコンストラクターが磨いた最高性能
ダラーラ ストラダーレ(2017~)「ダラーラがレースで培った技術をフィードバックしたロードスポーツ」
ダラーラ アウトもビリはインディカーや日本のスーパーフォーミュラなどで、多くのレーシングカー用シャシを供給している、イタリアのレーシングコンストラクターだ。
そのダラーラ アウトモビリが、初めて手がけたロードモデルが「ストラダーレ」だ。ストラダーレとはイタリア語で「道」を意味し、まさに公道走行が可能なレーシングカーといった車名。第1号車は2017年11月、創業者であるジャンパオロ・ダラーラの元に届けられた。
シャシとボディパネルにカーボンファイバーや複合材を用いて乾燥重量はわずか855kg。基本ボディはドアはもちろんサイドウインドーはおろかフロントのウインドスクリーンもない、2シーターのバルケッタスタイル。軽量化と高いボディ剛性を追求した結果、このシンプルだが美しいスタイルにたどり着いた。
それでもフロントウインドー、タルガフレーム、ガルウイング式に開くサイドウインドー、さらには大型のリアウイングといったパーツがオプションで用意され、バルケッタ〜タルガトップ〜クローズドクーペと、好みのボディタイプに数分の作業でトランスフォーム可能だ。
パワーユニットはフォード製の直4 DOHCターボをチューンしたものを横置き搭載。トランスミッションは6速MTが標準、オプションでパドルシフト付きロボタイズドATも設定されている。パワースペックは最高出力が400ps、最大トルクが500Nmと、スーパースポーツカーとしては控えめだが、軽量ボディのおかげで最高速は280km/h、0→100km/h加速は3.25秒というパフォーマンスを発揮する。
インテリアも走るための機能性を重視したものだが、カーボンとエコレザーを用いた質感の高いもので、エアコンも装着している。シート後ろやエンジンルーム後方にはラゲッジスペースが備わり、思ったよりは実用性が高い。
ホンダ NSX(2016~2022)「モーターによるトルクベクタリングを実現したスーパーカー」
15年以上にわたって生産され、日本初の本格的な量産ミッドシップスーパーカーとして人気を博した初代NSXだったが、惜しまれつつ2005年末に生産を終了した。その後継車の登場が待たれたが、その存在を具現化した「NSXコンセプト」は、2012年のデトロイトモーターショーで公開された。
そのときに詳細なスペックや3年以内に発売するというステートメントも発表され、世界中のホンダファンは色めき立った。その言葉どおりまずは2016年に北米で生産と販売が始まり、日本でも2016年夏に発表、翌2017年から発売が開始された。
スタイリングのイメージは初代NSXを踏襲している。初代でも特徴的だったミッドシップ車特有のボディサイドのエアインテークはCピラーと一体化して大型化され、フローティングCピラーを形成している。
ボディと面一化されたドアハンドルやステーの長いアウターミラーなど、空気抵抗低減を追求していることも見逃せない。サイズ的には初代より40mm長く、130mm幅広く、45mm高くなったのは安全性も含めて自然な流れといえるだろう。
シャシにはアルミニウムを中心とした複合素材によるスペースフレームが採用され、ボディパネルにも軽量化や歩行者保護の観点から、アルミニウムやカーボンファイバー、耐熱プラスチックなど、さまざまな素材が使い分けられている。
パワートレーンは、V6 DOHCエンジンをミッドシップ搭載するのは初代と同じだが、排気量は3.5Lにアップされてツインターボを装着。しかも、前輪に2基、後輪に1基の電気モーターも組み合わせて4輪を駆動する世界でも稀なハイブリッドシステム、「スポーツハイブリッド SHーAWD」システムを採用した。走行状態に合わせて左右前輪のトルク配分を自在に制御する異次元のコーナリング性能を実現したのがこのクルマの最大の特徴だ。
エンジンとモーターを合わせたシステムの最高出力は581ps、最大トルクは645Nmというハイパフォーマンスを与えられ、ヨーロッパのスーパースポーツカーと比べても遜色のないパワースペックを実現した。しかも、トランスミッションはストレスフリーの9速DCTでシームレスな加減速を実現した。
インテリアも視認性に優れたTFTメーターやホンダ インターナビなどの充実した装備、さらには先代同様に十分な広さを持ったトランクスペースを確保するなど、実用性を高めているのが日本のメーカーらしい。
日本仕様も米国の工場で生産される。2021年には、内外装をモディファイし、システムのパワースペックを529psと667Nmにアップした「タイプS」を発表。これが最終モデルとなり、2代目NSXは2022年11月に生産を終了した。