「軽さ」が生む軽快感と、手ごたえから伝わる上質感
そうしたコンパクトさ、バランスの良さは同時に、「軽さ」という魅力にもつながっています。
フロンクスは各種装備が充実したモノグレードで、エンジンも1.5L直4ガソリンエンジン×MHEV(マイルドハイブリッド)の1種類、2WDと4WDが設定されているのですが、それぞれカタログ数値は1070kg/1130kgに抑えられています。
一方のライバルはといえば、WR-V(1.5L直4ガソリン FF)が1210kg~、ヤリスクロス(1.5L直3ガソリン FF/4WD)は1110kg~/1200kg~と、おおむね40~100kg近く重くなっています。燃費性能にも十二分に配慮しなければならない=効率が重視されるこのクラスにあって、この差はドライバビリティにしっかり影響してきます。
今回の試乗は2WD、4WDともにもっぱら街乗りでのチェックとなりましたが、なるほど、普通に交差点を曲がっていても身のこなしがとても素直なことがわかります。峠道などではもしかするともっとはっきりとスポーティ感を確かめることができるのかもしれませんが、日常的に使うシーンでも、軽いからこそ生まれる軽快さを実感することができます。
もちろん軽い=走り味が安っぽい、わけではありません。なによりハンドルのタッチは好ましいもの。比較的しっかりとした手ごたえを残した操舵フィールで、だからといって重すぎることもなく、クルマとの自然な一体感を感じさせてくれます。
電動パワーステアリングは、日本向けに操舵アシスト力が最適化されているということでしたが、まっすぐ走っていている時はもちろん、車線変更でわずかに切り込んだ時などにもクルマの動きがわかりやすく、頼りがいを感じさせる味付けでした。
同様にサスペンションまわりやタイヤが日本の道路環境に合わせてセッティングされたおかげもあって、乗り心地にも上質感が生まれています。こと遮音に関しては、雑味を伝える高周波レンジのノイズを抑える方向で採用されたさまざまなアイテムが快適性を高めているようです。
しかも日本向けに設定された4WDモデルは、さらに共振、振動対策を徹底している、とのこと。どうしても2WDに比べてNVH(騒音、振動、ハーシュネス)性能が不利になりがちな4WDですが、開発陣はその弱点を克服しながら、より落ち着き感のある乗り味というメリットにつながっています。
ずーっと運転していたくなるのは「ほどよい刺激」のせいか?
一方、本格的に「コンパクトだけれどカッコいいクーペスタイルSUV」らしいキビキビ感や機動性がよりはっきりと味わえるのは、やはり2WDの方ではないでしょうか。
K15C型パワーユニットは2WDが最高出力101ps/最大トルク135Nm、4WDが99ps/134Nmというカタログ数値(微妙な差ですね)。1.5Lの自然吸気ながら今どきのエンジンらしく、低速でも扱いやすいフレキシビリティを備えています。
開発者によればスタート時にのみ電気モーター(3.1ps/60Nm)のアシストが入るそうですが、それはあくまで燃費節約のため。体感できるようなサポート感はありません。となると総じて、60kg分の軽さはやはり大きいわけです。
なによりこのエンジン、2500rpmを過ぎたあたりからググっとトルクが盛り上がる「スポーティ」な一面も備えているのですが、その気持ち良さが2WDはより明快でほどよく刺激的に感じられるのがポイントと言えるでしょう。
とはいえCVTではなく6速ATを採用していることで、エンジン回転とパワー/トルクの盛り上がりがしっかりシンクロしている心地よさは、駆動方式に関係なしのフロンクスの魅力となっています。より積極的に「加速感」を楽しみたくなるタイプなので、アクセルを踏み込む右足にもついつい気合が入ります。
さらにドライバーの走り心をくすぐるのが、アクセルレスポンスが向上するスポーツモード(スズキの2WD車としては初の設定なのだそう)やパドルシフトの標準装備。けっして劇的に速いわけではないけれどほどよい力強さを使いこなす楽しみもまた、「格別」と言えそうです。
高速道路では、遠出をするときにあると便利なアダプティブクルーズコントロール(全車速追従機能・停止保持機能付)を試してみました。とくに好印象だったのはレーンキープアシストのフィール。車線を維持するための入力がとても自然なので、任せて安心です。
走りの部分で少し気になったのは、減速感にややムラが感じられたところ。ATのセッティングによるものなのか、ブレーキ回生によるものなのか微妙にはっきりしませんが、減速トルクが一瞬強くなったり、フッと軽くなるような変化が微妙な違和感として感じられました。あくまで「微妙」なので、慣れれば気にならないレベルではあります。