先入観をくつがえすRCZは、紛れもなくスポーツカーだ
さて、RCZのギアを1速に入れてクラッチをつなぐ。このクラッチのつながるフィーリングがまた良い。とてもスムーズだ。しかもシフトフィールも良いから、運転が楽しくなる。さらに圧巻はエンジンだ。BMWと共同開発された1.6Lのターボエンジンは、スペック上の最高出力は200psだが、それ以上にパワフルに感じる。最大トルクは275Nmとけっこう太く、しかもその発生回転数が1700rpmと低めだ。そのため、低速域からトルクフルで扱いやすく立ち上がり重視の走りに向いている。おまけに3000rpmを超えるとかなりイイ音を奏でてくれる。
とにかくRCZのエンジンは元気で、そのレスポンスでFFとは思えないメリハリのあるハンドリングが味わえる。また、プジョーはダンパーをサプライヤーに任せず自社製造しているほどサスペンションにこだわるメーカー。足の動きは締まりがありながらも、とてもしなやかにストロークする。よって、乗り心地も良いがハンドリングも落ち着き感のあるシャープなものだ。
操舵と駆動を同じフロントタイヤで行うFF車は、コーナリングではフロントタイヤの仕事量が多いために一般的にはスポーツカーには向いていない。だが、RCZを走らせてみると自然で安心感のある気持ちの良いハンドリングに感動した。レイアウト上のハンデなどほとんど感じさせずにドライブを楽しむことができる。総合的な質感は高く、おとなのクーペといった印象だ。
唯一の欠点は、リアシートがかなり狭くヘッドレストも小さいので、おとなが座るのは不可能に近いこと。トランクスペースは321Lもあるから、このスペースをもう少しリアシートに充てて欲しかったとも思ってしまうのだが、スタイリングを考えると無理そうだ。まあ、2シーターと割り切ればラゲッジスペースは広いし、おとな2人での小旅行には十分対応できるだろう。
いずれにしても、Cセグメントのスポーツクーペというプジョー RCZは貴重な存在だ。日本でも海外でも、このクラスのスタイリッシュなスポーツモデルがもっと増えていくことに期待したいものだ。
プジョー RCZ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4290×1845×1360mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1350kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1598cc
●最高出力:147kW(200ps)/5800rpm
●最大トルク:275Nm(28.0㎏m)/1700rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:プレミアム・55L
●JC08モード燃費:13.2km/L
●タイヤサイズ:215/45R17
●当時の車両価格(税込):423万円