2011年1月のデトロイトモーターショーで発表された4代目アウディA6の国際試乗会が、春の訪れが迫るドイツで行われた。アウディは基幹モデルであるA6にどのような「新時代」を盛り込んでいたのか。Motor Magazine誌はこの国際試乗会に参加しているので、今回はその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年5月号より)

もはや「よりスポーティであることへのためらい」はない

新しいA6はこのところのアウディの快進撃を象徴するかのように、素晴らしい出来映えである。またそこには、アウディが目指しているのはこういうことだったのかと納得させられるポイントが数多くあった。

デザインから見ていこう。まずはスタイリングだが、もはや「よりスポーティであることへのためらい」はない。従来モデルはラグジュアリーでありかつスポーティでもあることをアピールしていた。実際にEセグメントはこの2つの要素をいかにうまく盛り込むかということが大切だが、新しいA6を見ると「スポーツ1本で行きます」というメッセージが伝わってくる。フロントマスクなど精悍そのもので、さらにホイールベースを伸ばし、全高を抑えたフォルムには躍動感がある。

インテリアはガラリと変わった。A7の流れを汲むものだが、インパネまわりのデザインはもともとショーカーのために考えたものを市販モデル用へアレンジしたそうだ。クルマのデザインにはエクステリアとインテリアのバランスの良さが必要だが、ニューA6はそうした点で見事な仕上がりと言える。

さて、スタイリングに大きく関係するホイールベースの延長は、フロントアクスルを前方へ71mm移動したことで可能になった。そしてフロントオーバーハングは82mm短くなっている。こうしたレイアウト変更で、前後の重量バランスは従来モデルより2ポイントほど後方寄りになった。

具体的にはクワトロが55:45、6気筒のFFが58:42、4気筒のFFが56:44になった。エンジニアに「これでアウディが考えている理想的な重量配分になったのか」と聞いたところ、「クワトロだけなら50:50が理想だが、FFと4WDがある現状ではこれがベストだ」という答えだった。

さらにスタイリングに関わることでは、空力性能の向上がある。Cd値と前面投影面積から割り出される総空力抵抗値は従来より5%以上低減している。これにより3.0TDIで130km/h定速走行をした場合、消費燃料は100km走行あたり0.6L少なく済むそうだ。

画像: ボディの20%以上にアルミを使うことなどで最大80kg軽量化。またバッテリーをリアに搭載することなどで前後重量配分を最適化した。

ボディの20%以上にアルミを使うことなどで最大80kg軽量化。またバッテリーをリアに搭載することなどで前後重量配分を最適化した。

まるでトルコンATのようにスムーズな7速Sトロニック

試乗は3.0TFSIクワトロのアダブティブエアサス仕様から行った。タイヤはオプションの255/40R19サイズを装着している。まず高速道路を走ったが、とても19インチの幅広タイヤを履いているとは思えないほど乗り心地がいい。そして静かだ。路面の状態がいいところで100km/h巡航しているときなど、助手席で目を閉じていると、ここがクルマの中であることを忘れてしまうほどだ。

さらに驚くべきは7速Sトロニックのスムーズさ。各社のデュアルクラッチトランスミッション(DCT)が、このところスムーズになっていることはわかっていたが、それにしてもこれは凄い。まるでA8のZF製8速ATのようだった。高級車でも十分にDCTが使えるということがよくわかった。ちなみに、7速、100km/h巡航でのエンジン回転数は1650rpmだった。

また高速道路走行時に重宝するのはヘッドアップディスプレイ。ドライバーの目からおよそ2.3m離れたボンネット上に262×87mmサイズのバーチャルウインドウが見える。常に遠くを見ている高速道路走行時に、近くのスピードメーターに目線を移すのは中高年ドライバーにとっては結構つらいもの。これがあればメーターの確認が楽なので、スピードを出し過ぎることもないだろう。

アップダウンをともなうワインディングロードではどうだったろうか。これは前後重量バランスと軽量化の効果が顕著だった。とても5m近いボディのクルマに乗っているという気がせず、軽快に走ることができた。いかにも鼻先が軽い印象なのだ。

一般路ではアイドリングストップシステムも体感したが、これはA1で受けた印象と近い。エンジンの再始動が素早い。タイミングだけでなくクランキングするモーターの出力も大きいのだ。そのため、発進時に何らストレスを感じることはない。これでEUの総合ドライビングサイクル100kmあたり0.4kmも燃料を節減できるというのだから有り難いシステムだ。

さて、エアサスではないスポーツサスのSラインにも試乗することができたが、これの仕上がりもハイレベルだ。路面状況によってはエアサス仕様を上回る乗り心地の良さと、切れのいいハンドリングを見せた。

最後になるが、車内に無線LANを設けたり、グーグルとタイアップして新サービスを提供するなど、インフォテインメント関係の進化にも目覚ましいものがある。この分野でもアウディは最先端を行きつつあるようだ。アウディは次世代のクルマのあるべき方向性をこのニューA6で示したと言っていいだろう。(文:Motor Magazine編集部)

画像: A7スポーツバックと共通性があるインパネまわり。A8で導入された手書き入力ができるMMIタッチがA6にも設定された。オプションの8インチモニターにはグーグルアースの地図が表示されている。

A7スポーツバックと共通性があるインパネまわり。A8で導入された手書き入力ができるMMIタッチがA6にも設定された。オプションの8インチモニターにはグーグルアースの地図が表示されている。

アウディ A6 3.0 TFSI クワトロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4915×1874×1455mm
●ホイールベース:2912mm 
●車両重量:1740kg 
●エンジン:V6DOHCスーパーチャージャー
●排気量:2995cc
●最高出力:220kW(300ps)/5250-6500rpm
●最大トルク:440Nm/2900-4500rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD 
●最高速: 250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速: 5.5秒
※EU準拠

This article is a sponsored article by
''.