リーフから始まった日産のBEVへの知見が余すところなく投入された
日産は、日本における電気自動車(BEV)のパイオニアだと言えるだろう。そのストーリーは2010年に発売が開始されたリーフから始まり、そこから、日本の本格的なBEVの時代が始まったと言っていいだろう。そして今では、国産自動車メーカーの多くがラインナップにBEVを揃えているようになった。
そんな日産のプレミアムなBEVがアリアである。さらにそのアリアにはスポーツ版のアリアNISMOもラインナップに加わっている。
ここではそんなアリアとアリアNISMOに試乗、両車の違いや個性などを確認した。試乗モデルは、アリアNISMOがB9 e-4ORCE、アリアがB9 FWDである。
アリアとアリアNISMOのエクステリアの大きな違いは、後者にはNISMOの赤いラインがデザインされているところがひと目でわかる部分だ。他にもスポイラーなどといったスポーツアイテムが装備されているのがアリアNISMOである。
ホイールサイズはアリアが19インチ、アリアNISMOが20インチという違いがある。見た目の迫力やスポーティさは、さすがに20インチを履くアリアNISMOが上回る。ただ、アリアのキャラクターはあくまで日産のプレミアムなBEVというもの。ちなみに日産はアリアを“日産初のEVクロスオーバーSUV”と呼んでいるが、その点でも個性の違いこそあれ、この両車にヒエラルキーはない。
ドライバーズシートに座っても両モデルの違いは明かだ。起動スイッチからアリアNISMOには“レッド”が使われ、それを押すところからドライバーの気持ちを昂ぶらせてくれる。あくまでスポーツが主役だ。さらに起動後はオープニングの画面が両車で異なるなど、それぞれに実に凝った演出がなされている。
室内はどちらもとても広くて快適。センターコンソールは電動で前後にスライドするため使い勝手はとてもいい。ちなみにこれをリアモーストにするとフロントシート左右間でウロークスルーができるようになるところもうれしい部分だ。フロアトンネルがなく、フラットなフロアと合わせて室内はどこに座ってもとても居心地がいい。
アリアのデザインは禅がモチーフになっている。たとえば室内には組子のデザインが用いられているが、こうしたところが落ち着く空間を演出しているのである。さらに夜間はその部分がライトアップされ昼間とはまた別の顔を見せてくれる。そのライトアップもアリアNISMOは赤くスポーティに、アリアは落ち着いた白と差別化されている。
標準装備されているシートヒーターとステアリングホイールヒーターは、寒い冬の朝をとても快適にしてくれた。これはプレミアムなBEVには欠かせないアイテムだろう。エアコンが効きだし車内が暖まるのを待って……ということなく、すぐに走り出せるところはとてもいい。
ICEからの乗り換えると実感できる経済的なメリット
走り出すと、やはりとてもスムーズだ。それは実にBEVらしいもので、静粛性も高くプレミアムと呼ぶに相応しい完成度を持っている。
車両重量はアリアNISMOはe-4ORCE、つまり4WDということもあり2230kg、アリアは2WDで2100kgだが、実際の走行時はその重さを感じないほど軽快である。重量物となるリチウムイオンバッテリーがフロア下に敷き詰められていることもあり低重心で走りはスポーティである。
走りはまるで右足の動きに車両が連結しているようだ。トルクは瞬時に立ち上がり、踏み込むと加速も実に強力。このあたりはBEVのスポーツカーらしい挙動である。コーナリング時の動きも好印象だが、e-4ORCEはスポーツカーフィールがより強く感じられる。前述のようにアリアは19インチ、アリアNISMOは20インチのホイール&タイヤを履いているにもかかわらず、乗り心地は悪くない。
今回は長距離ドライブも経験したが、エンジンの振動やギアショックがない意のままな走り、高い静粛性、充実したADASなどが疲れを感じさせないものだった。
アリアには出力違いでB6(66kWh)とB9(91kWh)があり、それぞれに2WDとe-4ORCEが用意される。アリアNISMOはB9 e-4ORCEのみである。e-4ORCEは前後にそれぞれ電気モーターを搭載し4輪のトルクを個別にコントロールできるのが特徴である。
アリアNISMOもアリアも試乗車にはプロパイロット2.0が搭載されている。このシステムのメリットは実際に使うととても大きいと感じられた。とくに渋滞時の効果は絶大、これだけでアリア&アリアNISMOを選ぶ理由になるだろう。
ちなみにプロパイロット2.0搭載車には7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーがクルマの360度を認識、同一車線内ハンズオフ走行も可能をしている。他にもプロパイロットパーキング、プロパイロットリモートパーキング、“クルマが人を守る”という考えのもとインテリジェントエマージェンシーブレーキ、インテリジェントアラウンドビューモニターなど全方位でドライバーと乗員を守ってくれる装備が数多く採用されている。こうしたところも日産のBEVのフラッグシップらしい充実した装備が採用されている。
アリアは満充電(SOC100%)での航続距離はWLTCモード値で640km(2WD・90kWhバッテリー搭載モデル)をうたう。このロングレンジへの満足度は高く、SOCが常に気になる人や内燃エンジン(ICE)から乗り換える人には満足できるものだろう。
アリアNISMO B9 e-4ROCEのドライブモードは「NISMO」、「STANDARD」、「ECO」、「SNOW」の4モード、アリアB9は「SPORT」、「STANDARD」、「ECO」の3モードが用意される。ふだん、街中を流すなら「STANDARD」がお勧め。これでも右足の動きにレスポンス良く反応してくれるので好印象だ。「ECO」モードはそれがやや穏やかになるがとても扱いやすい。
「SPORT」はかなりスポーティな動きを見せるが、その上を行くのが「NISMO」モードだ。気分を昂ぶらせてくれるスポーツサウンドとともにアクセルペダルとクルマが直結したようにタイムラグもなく即座に反応する。そして速い!それはスポーティな走りではなく、スポーツカーの走りそのものだ。さすが「NISMO」を名乗るモデルである。オーナーになったらぜひワインディングロードでその走りを味わってほしい。
BEVのメリットは電気を貯めておくことができること、そして貯めた電気を運べることである。たとえば、自宅にソーラーパネルを備えているならそこで作りだした再生可能エネルギーをBEVに充電し、郊外まで運びそこで使うこともできるということもメリットなのである。当然、アリアもアリアNISMOも同様のことが可能だ。ガソリンスタンドに行って給油しないストレスフリーはBEVならではのもの。
ほかにもBEVは維持費も少なくて済むというメリットもある。たとえばエンジンオイルやオイルフィルターがないので交換の必要がなく、それでけでも車検や点検時の手間やコストが安い。こうしたことを一度でも経験するとその差額に大きなメリットを感じることだろう。こうしたことを一度でも経験するともうICEモデルには戻れない人が出てきてもおかしくない。
リーフから始まった日産の電気自動車のストーリー。技術の日産から現在は、技術と電気の日産になっていると言っていいだろう。
日産アリア B9 プロパイロット2.0装着車 主要諸元
●全長×全幅×全高:4595×1850×1665mm
●ホイールベース:2775mm
●車両重量:2060kg
●乗車定員:5名
●最小回転半径:5.4m
●パワーユニット:交流同期電動機
●フロントモーター最高出力:178kW(242ps)/6600-7200rpm
●フロントモーター最大トルク:300Nm/0-4392rpm
●バッテリー容量:91kWh
●駆動方式:FWD
●一充電走行距離距離:640km(WLTCモード)
●タイヤサイズ:235/55R19
●車両価格:7,382,100円
日産アリアNISMO B9 e-40RCE プロパイロット2.0装着車 主要諸元
●全長×全幅×全高:4650×1850×1660mm
●ホイールベース:2775mm
●車両重量:2220kg
●乗車定員:5名
●最小回転半径:5.4m
●パワーユニット:交流同期電動機
●フロントモーター最高出力:160kW(218ps)/5950-11960rpm
●フロントモーター最大トルク:300Nm/0-4392rpm
●リアモーター最高出力:160kW(218ps)/5950-11960rpm
●リアモーター最大トルク:300Nm/0-4392rpm
●バッテリー容量:91kWh
●駆動方式:4WD
●一充電走行距離距離:-km(WLTCモード)
●タイヤサイズ:255/45R20
●車両価格:9,441,300円