2.5L直列5気筒直噴ターボエンジンは最高出力340ps
すでにモントリオールにおけるプロトタイプの雪上試乗をお伝えしているが、今回はモンテカルロで量産モデルをドライ路面で試乗することができた。モントリオールでは試乗時間が限られており、詳細な観察ができなかったが、今回アウディのスペシャル工房であるクワトロ社で開発されたRS3を改めて見ると、ボディ関係でもかなりの差別化が行われていることがわかった。
とくにスポイラーやエアインテークなどの周囲を取り囲むアルミ製フレームは、このRS3の存在感を際立たせている。ただしボディと同色のアクセントカラーを配した19インチホイールは、ちょっとやり過ぎな感じがなくはない。
TT RSでおなじみの2.5L直列5気筒直噴ターボエンジンは、最高出力340ps、最大トルク450Nmを発生する。これはパワフルだがあくまでも滑らかで、そのパワーフィールは洗練されている。さらに標準の7速Sトロニックはソフトウエアが改良され、シフトショックはもはやトルコン式AT並みに低減されていると言える。アウディの発表によれば、0→100km/hの加速は4.6秒、最高速は250km/hでリミッターが介入する。しかし、この数字に満足しないオーナーのためにはリミッター解除も可能で、その場合は最高速度280km/hへと上昇する。
パワーはどの回転域でもあり余るほどで、ちょっとしたストレートがあればスピードメーターの針は一気に振れる。
岩のようにガッシリとニュートラルを維持
オートルートを降りて、チュリニ峠へと向かう。ここはかつてワルター・ロールやハンヌ・ミッコラなどがクワトロを駆ってタイムアタックに挑戦していた難所である。
シャシのセッティングは電子コントロールで、初めはコンフォート、そしてスポーツと試した。後者はやや硬さが目立っていたが、この峠道ではドライバーの体も慣れてしまい、むしろしっかり感が好ましかった。しかもこうしたコーナーでのセッティングは秀逸で、滅多なことではドリフトなどできないほど岩のようにガッシリとニュートラルを維持する。そして80年代の懐かしい5気筒独特のサウンドを谷間に響かせながら、左右に雪の残ったルートをまるでレールの上を走るような安心感で疾走することができた。
使いやすく実用性の高い5ドアハッチバックボディを持ったRS3は、ロングツーリングを含む様々なシーンで活躍できる、まさにオールマイティな高性能スポーツモデルである。
ちなみに、このRS3の生産台数が限定されることはない。また価格だがドイツで4万9900ユーロ(約575万円)と、265psのS3より1万2000ユーロ(約138万円)高い。そして同じエンジンを搭載したTT RSよりも6250ユーロ(約72万円)安い。
ところで、ここまで報告してきて申し訳ないが、日本への輸出は決まっていない。我が国の車検をクリアするのがいくつかの点で難しいのだ。こうした事情は日本だけでなく、北米やオーストラリアも同様で、輸出される国は限られている。(文:木村好宏)
アウディ RS3 スポーツバック 主要諸元
●全長×全幅×全高:4302×1794×1402mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1650kg
●エンジン:直5DOHCターボ
●排気量:2480cc
●最高出力:250kW(340ps)/5400-6500rpm
●最大トルク:450Nm/1600-5300rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●最高速:250km/h (リミッター)
●0→100km/h加速:4.6秒
※EU準拠