電動化に向けた動きもしっかりと行いながら、伝統的な自然吸気の大排気量エンジンも精魂を込めて仕上げるフェラーリ。12気筒エンジンを搭載するFRの流麗な2ドアグランドスポーツカー、そのフラッグシップたる資質を実感してきた。(文:島下泰久 写真:フェラーリジャパン MotorMagazine 2024年12月号より)

ハンドリングは正確無比で、抜群のコントロール性に感服

アルミスペースフレームを用いた車体は前作812スーパーファストとは別物で、ホイールベースが20 mm短縮された上に、鋳造部品の増加などにより15%のねじり剛性向上が図られている。左右独立制御の後輪操舵システム、296などにも使われているABS Evo、そしてSSC(サイドスリップコントロール)8.0など電子制御デバイスも最新型だ。

画像: ハンドリングは正確無比で、抜群のコントロール性に感服

こちらの躾も見事なもので、日常域では非常に快適でスタビリティも高いが、いざコーナーに挑めば反応はシャープ。長いノーズを意識させない軽やかさで曲がっていける。

前々作のF12ベルリネッタなどは、ノーズが瞬時に平行移動するかのような切れ味を見せていたが、個人的にはシャープ過ぎると感じていた。クルマとじっくり対話しながらアクセルを踏んでいける12チリンドリの設定は、絶妙なところを突いている。

今回のスケジュールには、12チリンドリのタイヤ供給元のひとつであるグッドイヤーのテストコースでの走行も含まれていた。さすがと言うべきか、エスケープゾーンのほとんどないインフィールドと長い直線が組み合わされたコースは、マネッティーノをRACEモードにセットして、クルマの限界を見るには最良の舞台だった。

まずコーナーでは、正確無比なステアリングレスポンスと、スライド領域でも至極容易なコントロール性に舌を巻いた。後輪操舵が効き過ぎの感はあるが、おかげで安定しているのも事実である。

そして直線では迷わず全開に。300km/hの大台を余裕で突破する自然吸気V12のパフォーマンスとサウンドに酔い、それでもまるで不安感をもたらさないシャシ、そして空力性能に唸らされた。

刹那的な刺激よりも、じわりと染み入る歓びを求めた

トータルで見た12チリンドリの走りは、非常に洗練された仕上がりだった。

画像: 刹那的な刺激よりも、じわりと染み入る歓びを求めた

発表の際に謳われていた、50~60年代のグランドツアラーにインスピレーションを得たという話は、デザインだけを指したものではない。刹那的な刺激よりも、じわりと染み入る歓びを求めたかのようなその走りには、そうした往年のモデルと、どこか通じるものがあるように思える。

あるいは、それを刺激薄と感じる人もいるかも知れないが、フェラーリにとってみれば、それも狙いどおりなのだろう。何せ、12チリンドリは「通」のためのフェラーリなのだから。しかも、単に穏やかなだけではないということは、ここまで記してきたとおりだ。

走りはもちろん、車名でもデザインでもさまざまな想像を喚起し、その垂涎の世界へと引き込む1台。それが12チリンドリである。

【ドーディチ チリンドリ 主要諸元】

●Engine 種類:V12DOHC 総排気量:6496cc ボア×ストローク:94.0×78.0mm 圧縮比:13.5 最高出力:610kW(830ps)/9250rpm 最大トルク:678Nm/7250rpm 燃料・タンク容量:プレミアム・92L WLTCモード燃費:6.4km/L CO2排出量:353g/km ●Dimension&Weight 全長×全幅×全高:4733×2176×1292mm ホイールベース:2700mm トレッド:1686/1645mm 乾燥重量:1560kg ラゲッジルーム容量:270L ●Chassis 駆動方式:FR トランスミッション:8速DCT タイヤサイズ 前:275/35R21・後:315/35R21 ●Performance 最高速:340km/h 0→100km/h加速:2.9sec 0→200km/h加速:7.9sec

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