ハンドリングは正確無比で、抜群のコントロール性に感服
アルミスペースフレームを用いた車体は前作812スーパーファストとは別物で、ホイールベースが20 mm短縮された上に、鋳造部品の増加などにより15%のねじり剛性向上が図られている。左右独立制御の後輪操舵システム、296などにも使われているABS Evo、そしてSSC(サイドスリップコントロール)8.0など電子制御デバイスも最新型だ。
![画像: ハンドリングは正確無比で、抜群のコントロール性に感服](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2025/02/10/338c40de06f344957a7c9f8a2a7de600cb35495c_xlarge.jpg)
こちらの躾も見事なもので、日常域では非常に快適でスタビリティも高いが、いざコーナーに挑めば反応はシャープ。長いノーズを意識させない軽やかさで曲がっていける。
前々作のF12ベルリネッタなどは、ノーズが瞬時に平行移動するかのような切れ味を見せていたが、個人的にはシャープ過ぎると感じていた。クルマとじっくり対話しながらアクセルを踏んでいける12チリンドリの設定は、絶妙なところを突いている。
今回のスケジュールには、12チリンドリのタイヤ供給元のひとつであるグッドイヤーのテストコースでの走行も含まれていた。さすがと言うべきか、エスケープゾーンのほとんどないインフィールドと長い直線が組み合わされたコースは、マネッティーノをRACEモードにセットして、クルマの限界を見るには最良の舞台だった。
まずコーナーでは、正確無比なステアリングレスポンスと、スライド領域でも至極容易なコントロール性に舌を巻いた。後輪操舵が効き過ぎの感はあるが、おかげで安定しているのも事実である。
そして直線では迷わず全開に。300km/hの大台を余裕で突破する自然吸気V12のパフォーマンスとサウンドに酔い、それでもまるで不安感をもたらさないシャシ、そして空力性能に唸らされた。
刹那的な刺激よりも、じわりと染み入る歓びを求めた
トータルで見た12チリンドリの走りは、非常に洗練された仕上がりだった。
![画像: 刹那的な刺激よりも、じわりと染み入る歓びを求めた](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2025/02/10/113689f572728137d7b52246430cb817c98f04c5_xlarge.jpg)
発表の際に謳われていた、50~60年代のグランドツアラーにインスピレーションを得たという話は、デザインだけを指したものではない。刹那的な刺激よりも、じわりと染み入る歓びを求めたかのようなその走りには、そうした往年のモデルと、どこか通じるものがあるように思える。
あるいは、それを刺激薄と感じる人もいるかも知れないが、フェラーリにとってみれば、それも狙いどおりなのだろう。何せ、12チリンドリは「通」のためのフェラーリなのだから。しかも、単に穏やかなだけではないということは、ここまで記してきたとおりだ。
走りはもちろん、車名でもデザインでもさまざまな想像を喚起し、その垂涎の世界へと引き込む1台。それが12チリンドリである。
【ドーディチ チリンドリ 主要諸元】
●Engine 種類:V12DOHC 総排気量:6496cc ボア×ストローク:94.0×78.0mm 圧縮比:13.5 最高出力:610kW(830ps)/9250rpm 最大トルク:678Nm/7250rpm 燃料・タンク容量:プレミアム・92L WLTCモード燃費:6.4km/L CO2排出量:353g/km ●Dimension&Weight 全長×全幅×全高:4733×2176×1292mm ホイールベース:2700mm トレッド:1686/1645mm 乾燥重量:1560kg ラゲッジルーム容量:270L ●Chassis 駆動方式:FR トランスミッション:8速DCT タイヤサイズ 前:275/35R21・後:315/35R21 ●Performance 最高速:340km/h 0→100km/h加速:2.9sec 0→200km/h加速:7.9sec