オープン時の開放感は抜群でクローズド時の静粛性も高い
1.4TSIを搭載したゴルフカブリオレで、ニースの海岸線を走り出す。
最初に驚かされたのが、歴代モデルとは比べ物にならないほどボディのしっかり感が増していることである。以前のゴルフカブリオレも、大きな開口を持つオープンモデルとしてはけっこうしっかりできていたが、それでもピラー周りのシェイクは出ていた。しかし新型にはシェイクの「シ」の字すら感じられない。ギャップを乗り越えても振動はトンと1回で収まり、あとに変な余韻も残さない。したがってクリアなステアフィールや、足まわりの高い接地性など、ハッチバックとほぼ同質の乗り味が得られている。
聞けば、ハイテンションスチールのグレードを上げたフロントウインドウフレームを中心に、アンダーボディからサイドパネル&シル、バックパネルなど、車体のストレスメンバー各部に相当の補強を行っているとのことだ。
ただし、これに完全自動開閉式ソフトトップ機構やロールオーバープロテクションなども加わることで、その車重は1500kgを超えてしまった。ハッチバックのハイラインに対して約160kgの増加である。
それが走りに与えた影響は確かにある。ハイラインでは「これ以上必要ない」と思えたパワーフィールが若干薄れているのだ。とくにスタートダッシュでは、クルマに明確な重さを感じさせる。ついついアクセル開度が増してしまうのだ。
同時に210psの2.0TSIに試乗することもできたが、走りの痛快さという点でこれは魅力的なモデルだった。ただ、カブリオレでシャカリキに飛ばすというのも無粋な話。和み系のゴルフとしては、160psの1.4TSIは良い選択と言えよう。
オートルートをオープンで走ったが、キャビンへの風の巻き込みもよくコントロールされていた。とくに、リアシートを覆うカタチで展開するウインドディフレクターをシート後方で立ち上げておくと、後方からの巻き上げが低減する。この状態で4枚のウインドウを上げてしまえば130km/hで走ってもエアコンの風が肌を撫でるのがわかるほど車内は平穏だ。
Aピラーはハッチバックより角度を寝かせているものの、長さがかなり短い。その関係で、額の上は完全に青空という感じ。この開放感は素晴らしい。最近はAピラーを頭上まで回り込ませたオープンも多いが、これだと開放感は半減してしまう。
ただ、5月の南仏はすでにかなり日差しが強く、試乗後半はもっぱらトップを閉めて走行した。その場合は頭上に若干の圧迫感が出てくる。Aピラーが短い上に、頭上にトップとウインドウフレームを締結するロック機構を内蔵したルーフボードがあるのでそう感じるのだ。しかし、閉じてしばらく走ると、それも慣れてしまった。
クローズの状態での静粛性が非常に高いのにも感心した。3つ折りのソフトトップは運転席上部が畳んだ時にカバーとなるハードボードで、その後方にも3本のルーフボーが入るという念入りな造りによるものだろう。ちなみにこのソフトトップ、オープンにかかる時間は約9秒と素早く、しかも30km/h以下ならいつでも操作可能だ。
ゴルフファミリーに久々に帰って来た和み系の末娘「ゴルフカブリオレ」は、実力/ルックス共に大きく成長を遂げていたと言うわけである。(文:石川芳雄)

ゴルフの高いクオリティがそのままカブリオレにも備わる。トップの開閉スイッチはセンターコンソールに用意される。
フォルクスワーゲン ゴルフカブリオレ 1.4TSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4246×1782×1423mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1503kg
●エンジン:直4DOHCターボ+スーパーチャージャー
●排気量:1389cc
●最高出力:118kW(160ps)/5800rpm
●最大トルク:240Nm/1500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FF
●最高速:216km/h
●0→100km/h加速:8.4秒
※欧州仕様 EU準拠