常に「スーパー」であるためには、普遍的なレベルを超えた、さらなる高みへと上って行くことが要求される。そうして進化は続くのだが、現時点で頂点を極める特別な2モデルがほぼ同時期に発表された。果たしてこれは偶然なのか。(文:西川 淳 写真:フェラーリS.p,A/MotorMagazine2024年12月号より)

新たな次元を開いた2台。まさにレーシングモンスター

世界のハイエンドブランドにおいて中核をなすモデルの性能は、それが2+2の大型クーペでも、はたまたSUVでも、ひと昔前のミッドシップスーパースポーツを上回ってきた。最高800ps、最大トルク1000Nmなどという非日常な数字が、遠慮なくそのスペックシートに記されている。

画像: レーシングマシンではなくて至高のドライビングカーを追求するマクラーレンを象徴する存在となるW1。

レーシングマシンではなくて至高のドライビングカーを追求するマクラーレンを象徴する存在となるW1。

そうなれば当然、ブランドイメージを牽引するアイコニックなモデルのスペックは、とくにスポーツカー色の強いブランドにおいて、それらをたちまち上回るものにならざるを得ない。それこそが誰もが納得しうる進化の「目に見える形」であるからだ。数字もまた、いつの時代でも正義である。

2024年10月。世界を代表するスポーツカーブランドが、それぞれにとって大変重要なモデルをほぼ同じタイミングで発表した。マクラーレンW1が6日に、フェラーリF80が17日に、それぞれ本国においてワールドプレミアを飾ったのだ。いずれもシリーズ生産モデルの格上として位置付けられた生産台数限定の超高性能モデルであり、世界中のスーパーカーエンスーが憧れ続け、ビリオネアが万難を排して手に入れようとする、ほぼ10年に一度のお祭り騒ぎというべき存在である。

先に登場したW1は、スーパーカーの頂点に君臨する伝説のF1(3シーター)と電動化時代の幕開けとなったP1の後継というべき、マクラーレンでいうところの「アルティメットシリーズ」第三弾であった。実物を間近で見たが、いかにもマクラーレンらしいスタイリングとはいえ第一印象はさほど強烈ではなかった。いつものようにシンプルだから、だ。

しかし極端なキャビンフォワードと下半身の空力モンスターぶりを見るにつけ、そしてスペックを含めた中身の物凄さを知るにつけて、常に至高のドライビングカーを目指し続けるブランドの真骨頂を見せつけられた気分になった。

画像: 作り込まれたW1のインテリアは超高性能に見合う新たな潮流を提案する。

作り込まれたW1のインテリアは超高性能に見合う新たな潮流を提案する。

9000rpm以上回る4L V8ツインターボエンジンを新たに開発して、これにアクシャルフラックスモーターを1基加え、システム総合最高出力1275psを叩き出す。乾燥車両重量はわずかに1399kgなので、パワーウエイトレシオは何と1.1kg/ps。

このハイパワー&トルクを、驚くべきことに8DCTとeデフを介してリア二輪のみに伝達する。そう、マクラーレンはあくまでも後輪駆動にこだわった。これはフロントアクスルからの手応えを筆頭にドライバーとのエンゲージメントを最大化するためだ。ちなみに限定399台、プライスは2ミリオン€(約4億円)以上。

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