スズキ ワゴンR & ワゴンRスティングレー(2012年:5代目フルモデルチェンジ)

ワゴンR伝統の縦型風ヘッドランプは、5代目となった新型でも踏襲された。品の良さを保ったままワイドな安定感を見せるスタイルだ。
結論から先に言ってしまうと、新型ワゴンRは良いクルマだった。走り出して最初に実感したのは、低燃費技術のひとつ「エネチャージ」のありがたみ。素早く電気を出し入れできるリチウムイオン電池を軽自動車として初めて搭載し、減速時に高出力オルタネーターが回生する電気を無駄なく蓄えてくれるシステムだが、これによって、エンジンパワーを使ってオルタネーターで発電する必要が最小限で済む。
結果的に、オルタネーターを回すための余分な負荷が減るため、エンジンフィールがすっきりしている。MRワゴンから搭載されたR06A型エンジンは、もともとかなり力強くてパワフルな印象。だが今回の取材では4名フル乗車+撮影機材満載という、ターボなしのNAエンジン車にはキビしい条件にもかかわらず、ターボではなくても十分かなと思わせるほど力強い。
もちろん、車両重量が比較的軽いことも影響しているとは思うが、アクセルペダルに軽く足を置いているだけで、スルスル〜ッと淀みなくスピードが上がっていく。しかも、エンジンやCVTの唸り音も控えめで、高回転まで回さないとパワー不足を感じがちな、NA軽自動車への先入観を気持ち良く覆してくれた。

ワゴンRのインパネ。基本デザインはスティングレーと共通だが、センターダッシュ部などはよりシンプルな意匠となっている。
もうひとつ低燃費技術「新アイドリングストップシステム」のフィーリングも良かった。減速していくと13km/hからエンジンがストップする制御が盛り込まれているのだが、注意していないと気がつかないほど自然に止まる。そのままブレーキを踏んで停止して、再始動したときに「エンジン止まってたんだ!?」と、ようやく気がつくくらいだ。再始動も実に静かで、ブルンという不快な振動が少ない。頻繁にアイドリングストップしがちな街中では、かなりうれしいポイントだ。
さらに自慢の新技術「エコクール」の効果もしっかり体感できた。これはエアコンに蓄冷材を内蔵することで、冷気を「貯めておく」工夫。アイドリングストップ時には、この蓄冷材を使って送風される空気を冷やすシステムだ。
取材日は記録的な残暑が継続中で、当然エアコンがかかってないと室温がすぐに上がってしまう状態だったのだが、アイドリングストップのまま長い間信号待ちをしていても、エンジンが再始動してしまうことは一度もなかった。もちろん車内は涼しくて快適なまま。実用燃費の向上という意味では、かなり効果があるだろう。