タイトル争いの行方を占う、東京の2日間
レースが開催されるのは昨年同様、東京ビッグサイト周辺の市街地を活用した特設コース。前回のレイアウトはすでにドライバーたちから「現代的かつ挑戦的」と高く評価されていた。そんななか、今年は一部のセクションが調整され、より高速かつテクニカルなバランスが求められる構造へと進化。フラットな舗装路ながら起伏があり、鋭角なヘアピン、目測を誤れば壁と接触するハードなレイアウトとなっている。

ランキング首位で凱旋を果たす日産のローランド。
そして何より注目すべきは、今年の東京大会が2日間にわたるダブルヘッダー形式で行われることだ。これは同選手権において、日本が重要な開催地であることを示しているのではないだろうか。しかし、ダブルヘッダーはドライバーやチームにとってミスが許されない厳しい戦いでもある。
初戦で接触やトラブルに見舞われれば、翌日のレースに響いてくる。それがフリー走行であればなおさらだ。
この東京での連戦は、選手権の行方を大きく左右する可能性を秘めている。とりわけ目覚ましい活躍を見せているのが、日産のオリバー・ローランドだ。第2戦メキシコを制し、第4戦ジェッダでも勝利。さらには第6戦モナコでも勝ち星を挙げ、ここまで3勝をマークしている。
特筆すべきはその安定感であり、エネルギー回生、アタックモード、ピットブーストといった戦術的要素を、高い精度でこなしている印象だ。すでにランキング2位に対して48ポイント差をつけているローランドだが、今大会の結果次第では、タイトル争いで大きなアドバンテージを得ることになる。
また、昨年果たせなかったチームの母国優勝を狙えるチャンス。日本のファンの前で君が代を流したいところだ。
ポルシェ、ウェーレインの巻き返しにも期待
そのローランドに一矢報いたいのがポルシェのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタとパスカル・ウェーレイン。ダ・コスタは表彰台3回と4位が1回、ウェーレインは1勝を含む表彰台を2回獲得している。

ローランドとのポイント差を詰めたいランキング2位のダ・コスタ。
速さのあるポルシェ勢だが、ダ・コスタはリタイア2回、ウェーレインも表彰台を獲得したレース以外は上位でフィニッシュすることができていない。この好不調の波がローランドとのポイント差となって表れているわけだが、順位変動の激しいフォーミュラEにおいて、ローランドの高水準な安定感は頭一つ抜けていると言っていいだろう。
このタイトル争いの他にも注目したいのが、第7戦モナコで見事に復活の優勝を飾ったセバスチャン・ブエミだ。ブエミは初年度から参戦しており、2015-16年のチャンピオンである。このシリーズで多くの優勝を飾ってきたが、近年は成績に陰りが見えつつあった。
復活を期して臨んだ今シーズンだったが、開幕戦で7位を獲得して以降ノーポイントが続いた。しかし、第7戦モナコで6年ぶりの勝利を挙げ復活を遂げて見せたのだ。この勝利で通算14勝目となり、獲得ポイントもシリーズ史上初の通算1000ポイントに到達。フォーミュラEを黎明期から盛り上げてきたベテランが東京でも魅せてくれるかもしれない。

第7戦モナコで6年ぶりの勝利を挙げたブエミ。