日曜日は天気が回復し待望のドライコンディションに
昨日から一転、雨が止み天気が回復した日曜日。雲の隙間から陽が差し込むも、気温・湿度ともにあがり蒸し暑い。
8時から40分間で行われるFP3を前にトラックコンディションを確認すると、ホームストレート上にはウェットパッチが残っている箇所も。どうやらコースの前半部分は水はけが悪いようだ。これが公道レースの難しいところである。

午前7時に撮影したホームストレート。まだ濡れているものの、天気と路面は回復傾向に。溝付きタイヤでレースをするフォーミュラEではドライとして走行できるレベルだ。
しかし、注意しなければいけないのは路面ではなく気温の高さだ。最高気温は27度、湿度は80%にものぼるコンディションは、冷却が鍵を握るフォーミュラEにとって頭を悩ませる要因のひとつと言える。
8時から40分間で行われるFP3は、ポルシェのパスカル・ウェーレインがトップ。2番手に日産のノーマン・ナト、3番手にはマセラティのジェイク・ヒューズとなった。
優勝本命である日産のオリバー・ローランドは、タイム出しを行わず周回を重ねており、レースに照準を合わせている印象。最後にアタックを行いミスを犯してしまうが、レースペースに集中できるほど、予選での速さには自信があるようだ。
10時20分からは今週末初の予選がスタートした。グループAには優勝本命のローランドをはじめ、昨日優勝を果たしたバンドーン、モナコウィナーのセバスチャン・ブエミらが出走。また、この頃には路面は完全に乾いており、正真正銘のドライコンディションとなっている。
各車セッション中はアタックをし続けるなか、ローラヤマハのルーカス・ディ・グラッシがトップ、日産のナトとローランドが続き、日本勢がトップ3を形成する。
セッション残り3分でエルフィン・エバンスが高速コーナーでウォールに右リヤタイヤを当ててしまいクラッシュ。怪我人は出なかったが、タイヤが吹き飛ぶ事態となった。車両撤去のため、赤旗が掲示。残り3分でのセッション再開ということもあり、各車一斉にコースインしアタックに入っていった。

開幕戦優勝後、不調が続くエバンス。
最後のアタックは全員タイムを詰め、さらにタイム更新を果たしたディ・グラッシがトップ。ナトが2番手、ローランド3番手、4番手のジャン-エリック・ベルニュの上位4台がデュエルに進出した。日本メーカー3台が次に駒を進めるなか、前日劇的な優勝を果たしたバンドーンはグループ10番手でデュエル進出とはならなかった。グループBはウェーレイン、エドアルド・モルタラ、ダン・ティクタム、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタがセミファイナルに進出している。
デュエルはいきなり日産ワークス同士の対決となった。両者僅差の戦いとなったが、ナトがターン11でウォールに接触したことで決着。ローランドがセミファイナルに進出するも、ナトのマシンには大きなダメージがあるため、日産にとっては複雑な結果となってしまった。
ベルニュとディ・グラッシは初めての対決。ディ・グラッシがリードするも最終コーナーでベルニュが逆転している。市街地レースが得意なティクタムとモルタラの対決はティクタムに軍配、日産と同じ同門対決となったダ・コスタとウェーレインはダ・コスタにミスがありウェーレインが勝利した。
セミファイナルはベルニュとローランドの対決となり、好調のローランドが貫禄勝ち。ウェーレインとティクタムの対決は、勢いにのるティクタムが0.16秒上回りファイナルに進出した。
昨年の東京E-Prixから3連続ポールポジション獲得を狙うローランドとティクタムのファイナルは、セクター1、2でティムタムがリードもまさかのスローダウン。思わぬ形での決着により、ローランドが昨日に引き続きポールポジションを獲得となった。ティクタムのスローダウンはトラブルではなく、ターン15で壁に接触したことに起因していた。
ローランドはこれで東京E-Prix全てでポールポジションを獲得する快挙となった。これで成し遂げなければならないことは優勝のみだ。

JAFモータースポーツ部部長の村田浩一氏からポールポジショントロフィーを授与されるローランド。
ローランドが魅せた!熾烈なバトルを制し東京E-Prix初優勝
決勝も空に雲が覆うも雨はなくドライコンディションに。32周の決勝レースは、ローランドがスタートを決めホールショットを奪う。ウェーレインが積極的に狙うもティクタムが2番手を死守してみせた。ここから上位勢の順位は変わらず、ローランドを先頭にエネルギーマネジメントを行っていく。

トップの座を「死守」するローランド。
後方ではニック・デ・フリースはサム・バードとの接触により、フロントにダメージを負ってしまった。
7周目、上位勢では日産のローランド以外が1回目のアタックモードを消化。昨年とは違い、アタックモードの効果は大きく、8周目には2番手のティクタムがローランドをかわしトップに浮上した。
さらにバーナード、ウェーレインもローランドをパスしポジションアップ。ウェーレインはバーナードをも攻略し2番手に浮上する。
アタックモードの消化義務を残しているローランドはステイアウト。そんななか、コース上に落ちているデブリの撤去のため、12周目にFCY(フルコースイエロー)が出された。この際、ランキング2位のダ・コスタがFCYが出たタイミングで、減速が遅れ前方のマシンに衝突。緊急ピットインとなり、痛恨のリタイアに終わってしまった。
FCYはすぐに解除され、13周目にリスタート。4番手につけるローランドは、アタックモードに残しながらも上位3台とのギャップはなく走行しチャンスを伺っていく。そして、17周目にようやくアタックモードに入ると、同じくアタックモードで追い上げを見せている5番手のニック・キャシディの後ろにつけた。
キャシディを抜いたローランドは、アタックモード起動中にモルタラを攻略することができなかった。しかし、ライバル勢のアタックモードが残り4分に対して6分間使える状況であり、2分間アドバンテージを得ることになる。
22周目、今度はローランドが先に動く。6番手で戦列に復帰したローランドは5番手に上がると、翌周には上位勢が一斉にアタックモードに入り、2番手に浮上。これでアタックモードの消化義務という意味では条件は同じになったが、ローランドはライバルたちに対し、20秒ほどアタックモードが多く残る計算だ。
そしてトップのウェーレインたちがアタックモードの使用時間がなくなったタイミングでローランドがアタック。26周に仕掛けると幅寄せされながらもウェーレインをオーバーテイクしトップに再浮上した。
しかし、ウェーレインは諦めずに仕掛けていき、バーバード、ティクタムといったライバル勢もローランドにアタックしていく。そんななか、バーナードがモルタラに接触されストップしたことで、残り3周というタイミングでSCが入ることになった。このアクシデントが混沌とする優勝争いの行方を左右した。
残り周回が3周というなかでのSC導入は、アディショナルラップは追加されない。バッテリー残量の問題も解消されるため、ローランドが圧倒的に優位となった。
残り1周でレースは再スタート。残量が関係なくなったため、先頭のローランドをはじめ全車が全力でアタックする。ローランドはミスを犯すことなく逃げ切りトップチェッカー。ついに日産の母国である日本で優勝をもたらした。
2位にウェーレイン、3位には今週末好調だったティクタムが入り、フォーミュラEで初の表彰台を獲得した。

FEで初の表彰台獲得となったティクタムはドライバー・オブ・ザ・デイにも選出された。これまで物議を醸す発言もあったことから、「(選んでくれるなんて)そこまで嫌われてなかったんだね!」とジョークを飛ばしていた。
運も味方につけたと言ってしまえばそれまでだが、ローランドのSC前の渾身のブロックが優勝を呼んだと言える。間違いなくローランドの気迫が東京E-Prixでの優勝を引き寄せたのだ。
雨のなか、不運に泣いたローランドと日産は見事結果で応えてみせた。日本のファンの前で君が代を流してくれたローランドに会場では大歓声が起こった。ローラヤマハのディ・グラッシも奮闘し5位入賞を果たすなど日本勢が大活躍。2回目の開催、3レース目でにして東京E-Prixのボルテージは最高潮を迎えている。
日本で、日本のメーカーが勝ち、多くの日本のファンが喜んでいる光景はあまり見ることができないものだ。メインのレースはもちろんだが、訪れたファンにとって楽しめるイベントや催し、利便性の良さが魅力だったFAN VILLAGEなど、週末通して楽しめる一大イベントとして東京E-Prixは成功を収めたといっていいだろう。
これからどのように進化を続けていくのか。フォーミュラEと東京E-Prixの今後は考えるだけでワクワクする。

娘と共に登壇したローランドが日本のファンの歓声に応える。

前日の第8戦ではFAN VILLAGEのライブステージで行われたが、今大会は屋外の表彰台でセレモニーが行われた。