従来モデルに比べて明らかにリニアリティが向上
クラストップの低燃費を実現したというデミオ13-SKYACTIV、その走りっぷりはどんなものかと興味津々だったが、その試乗会を箱根で行うという案内が届いた。マツダがその出来映えにいくら自信を持っていたとしても、低燃費志向のコンパクトカーなのだから、アップダウンのきついワインディングロードが多い箱根では厳しいだろうと思っていた。アイドリングストップをデミオとして初めて装備したことでもあり、平坦な都市部で行った方がいいのではないかと感じていた。
そして、試乗会当日は台風6号の影響を受け、試乗会場となった箱根付近は大雨、正直なところ、この天候と箱根の道では、新しいデミオの良さはわからないだろうなと、半ば諦めつつ箱根へ向かったのだった。
ところが、意外なこととはあるものである。13-SKYACTIVを借り出して数十メートル走っただけで、ステアフィールの良さに驚いた。今回のマイナーチェンジではボディ剛性のアップやブッシュの改良、ダンパーチューンの見直し、CVTの特性変更などが行われているが、従来モデルに比べて明らかにリニアリティが向上している。ハンドルを回したときのメリハリある手応えは、このクラスとしてはかなり上質だ。

この躍動感のあるスタイリングはまだまだ新鮮である。
低燃費化によるパワーダウンのハンデはまったく感じられない
ここまでは13-SKYACTIVに限ったことではなく、新しいデミオ全般の話ということになる。
肝心の13-SKYACTIVの運動性能はどうだろうか。初めは平坦で緩やかなコーナーが続く道を走ったが、絶対的なパワーは必要にして十分なものがあった。スペックは最高出力が84psで最大トルクは112Nmと大人しいものだが、車重が1010kgと軽量なこともあるのだろう、まったく不満はない。そもそも絶対的なパワーよりも、足まわりがしっとりと、しかもしっかりしていることによる気持ちよさが際立っている。雨は降り続いている。台風特有のもので、時に強くなり、また小康状態になったりするが、路面は超ウエット、こんな悪条件下でこれだけの気持ち良さを感じさせるとは、見事という他はない。
さて、次に向かったのはアップダウンの激しい本格的なワインディングロード。その上り坂はさすがに厳しい。アクセルペダルを踏み込むとエンジン回転が一気に上がり、それにともなってCVTからも唸るような音が出る。豪雨でその騒音はかき消されたので、好天時にはどんなレベルなのかはわからないが、かなり大きい音であることは間違いない。
ただ、その音さえ気にしなければ、1.3Lの84psエンジンとしては力強さがあり、CVTと組み合わせることでアップダウンのあるワインディングロードもこなせるということである。下り坂では軽量コンパクトであることのメリットが十二分に発揮されて、クイクイと気持ちよく向きを変えてくれることは言うまでもない。ステアフィールの良さや運転の楽しさについては、国産の同クラスの中でもトップレベルにあると言っていいだろう。
さて、そろそろまとめに入らなくてはならない。まず、デミオ13-SKYACTIVは通常の1.3Lモデルである13C-Vに比べると、最高出力が6ps、最大トルクが8Nm少ないが、そのことによるハンデはまったく感じられなかった。そして、スカイアクティブという総合的な低燃費技術を身につけた上での総合力の高さに驚かされた。
ただ、13-SKYACTIVについては、やはり実際の燃費がどのくらいであるかということを確かめない限り、最終的な評価を下すことはできないだろう。それを試す機会がまもなくあり、その結果については次号で御報告するので、楽しみにしていただきたいと思う。(文:Motor Magazine編集部)

総合的な低燃費技術「SKYACTIV-G」を搭載した1.3L直4DOHC SKYACTIVエンジン。
マツダ デミオ 13-SKYACTIV 主要諸元
●全長×全幅×全高:3900×1695×1475mm
●ホイールベース:2490mm
●車両重量:1010kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1298cc
●最高出力:62kW(84ps)/5400rpm
●最大トルク:112Nm(11.4kgm)/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●車両価格(税込み):140万円(2011年当時)